教えて!チャッピー!

七海先生の中国語あれこれ

中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習にまつわるお話をご紹介しています。

今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、教えて!チャッピー!というテーマのコラムをご紹介します。

執筆者:七海和子先生

日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。

 皆さん、こんにちは。七海和子です。

 今回のお題、「チャッピー」とは米オープンAIが開発した「ChatGPT」の愛称。2025年の流行語大賞にもノミネートされましたね。

 今、AIを語学学習にどのように活用するべきかが注目されています。皆さんは、AIを利用していますか?

 私個人の話をすると、翻訳や通訳業務の場合、職業倫理の観点からAIを使うことはありません。ただ、準備段階で英語を含む他言語の資料などを読む時には、AIを使いまくっています。

 中国語学習の際、皆さんもチャッピーに手伝ってほしいなーと思うこと、ありますよね。そこで今回は、ChatGPT、ドイツで開発されたDeepL といったAIと、皆さんお馴染みの翻訳アプリ、Google翻訳がどのように訳出してくれるのかを見てみたいと思います。紙面の関係で、中→日、日→中の訳を1つずつ比べてみます。便宜上、ChatGPTは「C」、DeepLは「L」、Google翻訳は「G」としますね。

 まずはこちらから。

原文ChatGPTDeepLGoogle翻訳人間
截至2024年5月,栃木县面临失学风险的外籍儿童有83人。2024年5月時点で、栃木県では就学できないリスクのある外国籍の子どもは83人います。2024年5月現在、栃木県には就学の危機に直面している外国籍の児童が83人います。2024年5月現在、栃木県では83人の外国人児童が退学の危機に直面しています。2024年5月の時点で、栃木県には不就学の可能性がある外国籍の子どもは83人でした。

 ここでの注目ポイントは“面临失学风险的外籍儿童”の訳。“风险”は確かに多くの場合、「リスク」と訳されます。リスクとは、日常的には「危険性や危険度」といった意味合いです。そうすると、ここで「C」や「G」のように訳すのが適当かと考えると、ちょっと違和感がありませんか?「G」は“失学”を「退学」(確かにこの意味もあるのですが)と訳していて論外です。原文の“面临失学风险的外籍儿童”とは、「学齢期にありながら、日本の学校に通えていない」状態なので、「人間」(私)は「不就学の可能性」と訳しました。また、「D」と「G」は共通して「~の危機に直面して」と訳しています。もちろん、“面临~风险”だけを見たら間違いではありません。が、直訳すぎて、この原文にはそぐわない表現かな、という印象を受けます。


 ところで、2025年6月にMITの研究チームが発表した論文”Your Brain on ChatGPT”で、おもしろい研究結果が出ています。「ChatGPTを使って書く」、「Google検索などは使うが、文は自分で書く」、「外部ツールを一切使わず自力で書く」の3グループにエッセイを書かせ、書いた直後にそれぞれのグループに自分が書いた内容を引用させたところ、なんとChatGPTを使って書いたグループは83.3%が、自分のエッセイから一文も引用できなかったとか。これに対し、他の2グループでは、引用に失敗したのはわずか11〜17%だったそうです。

 語学学習においても、ちょっとしんどくても、自力で読み、訳すことが、最終的には自分の血肉になるのでしょう。

 が、チャッピーの使用を完全に否定しているわけではないのですよ。要所要所でうまく使うことがこれからの語学学習に必要なのだと思います。皆さんはどう使いますか?

今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2026年7月号に掲載しております。日→中の場合どうなるのか気になる方はぜひチェックしてみてください!

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