世界華文教育を牽引し中華伝統文化を未来に引き継ぐーーーー

中国語語学誌『聴く中国語』は毎月、日本で活躍している中国の有名人や日中友好に貢献している日本人にインタビューをしています。
今回は横浜山手中華学校校長の張岩松さんにインタビューしました。これまでのご経歴や華文教育、そして横浜山手中華学校に寄せる熱い思いを伺っています。
日本へ渡ったきっかけ
中国語教育の道を志したのは、北京語言大学で対外漢語教育を専攻したことが出発点だ。大学では外国人に中国語を教えるための基礎を学び、そのまま国際中国語教育の分野へ進むことになった。
卒業後は国務院僑務弁公室・北京華文学院に勤務し、華僑・華人に中国語を教えていた。転機が訪れたのは2000年。中国政府の派遣により、横浜山手中華学校の中国語講師として来日したのである。
当初は任期付きの派遣だった。しかしこの学校との出会いが、その後の人生を大きく方向づけることになる。
「教える喜び」を知った瞬間
教師を志すきっかけは意外にも数学だった。
子どもの頃から数学が得意で、中学・高校ではよく友人に勉強を教えていたという。あるとき同級生に数学の問題を説明したところ、解けた瞬間に彼女が飛び上がるほど喜んだ。
その姿を見て、「教えるとはこういうことなのか」と気づいた。
自分が教えたことで相手が理解し、喜び、その喜びが自分にも返ってくる。その体験が教師という仕事への強い憧れにつながった。
高校では英語を専攻していたため、中国語と英語の両方を生かせる分野を探した。そのとき出会ったのが「対外漢語教育」だった。

倉庫の中に眠っていた歴史
横浜山手中華学校での仕事の中で、思いがけない発見があった。
校内の倉庫に、大量の古い写真や資料が保管されたままになっていたのだ。そこには歴史的に貴重な人物の写真も数多く含まれていた。
「このまま誰にも見られずに埋もれてしまうのは惜しい」
そう考え、資料を整理し、創立100周年の記念アルバムとしてまとめた。配布すると、華僑の人々や卒業生から大きな反響があった。
この出来事が、さらに大きな仕事へとつながる。
中国社会科学院近代史研究所の所長が学校を訪れた際、この資料を見て「きちんと校史としてまとめれば大きな価値を持つ」と助言したのである。日中友好館の支援もあり、校史編纂プロジェクトが動き出した。

校史を書くという難しさ
しかし、実際に書き始めてみると筆は思うように進まなかった。
歴史を書くというのは、出来事を並べればよいというものではない。時代の流れや背景を整理し、全体の脈絡を示さなければならない。
そこで卒業生や華僑、元教員などへのインタビューを重ね、証言を集めていった。
取材を続けるうちに見えてきたのは、この学校が単なる教育機関ではないという事実だった。そこには横浜華僑社会の何世代にもわたる努力と苦難の歴史が刻まれていたのである。

一度帰国、そして再び横浜へ
校史編纂を終え、2005年に任期満了で帰国する。
帰国後は北京華文学院で華文教育処の副処長を務め、教育行政に携わった。当時まだ29歳。将来はさらに昇進する可能性もあった。
それでも最終的に彼は辞職を決断する。
理由はシンプルだった。横浜の華僑社会から「戻ってきてほしい」という声が続いていたからだ。そして当時の校長からも「学校を最もよく理解しているのは君だ」と背中を押された。
こうして再び横浜へ。一般教員、副校長を経て、現在は校長を務めている。
三つの社会を生きる教育
横浜山手中華学校は120年以上の歴史を持つ。清朝の官員による揮毫、中華民国の孫文の題字、さらに中華人民共和国の江沢民の題字も残されている。
戦争や災害の中で校舎が二度倒壊するなど、多くの困難も経験してきた。それでも華僑社会は「有钱出钱、有力出力」という精神で学校を支え、再建してきた。
教育理念は「中国の心、世界の眼」。
日本社会でも中国社会でもない、華僑という第三の視点から世界を見ることを重視している。

そのため本校では
日本社会・中国社会・華僑社会
という三つの立場を理解する教育を行っている。
中国での交流活動、中華街での獅子舞やパレードなどの文化活動もその一環だ。こうした取り組みは多文化教育の実践として注目され、大学の研究者や学生が訪れることも多い。

これからの教育に必要なもの
これからの社会で重要になるのは、多様な文化を理解し、対話できる力だと彼は語る。
共感力を持ち、異なる価値観を理解しながら社会に関わる人材。そのような人間を育てることが教育の役割だ。
「学校が学生一人ひとりに、より良い人生をもたらせる場所であってほしい」
多文化の視点を持ち、世界を多面的に見る力を育てる。それが横浜山手中華学校の教育の目指すところである。

横浜山手中華学校 校長・張岩松先生
今回のインタビューの詳細や日中対訳は月刊中国語学習誌『聴く中国語』2026年3月号に掲載されています。さらに詳しくチェックしてみたい方は、ぜひご覧ください。

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