今回は声優で翻訳家である白伊先生が、2023年に『聴く中国語』で中国のサブカルをテーマに執筆された「どこまで知ってる?サブカルチャイナ」というコラムをご紹介します。
“二刺螈”=ACGを愛する人たち
サブカルチャーと言えば、真っ先に漫画やアニメ等を思い浮かべる日本人の方も多いのではないでしょうか。
一衣帯水の隣国として長年影響し合ってきた背景もあり、中国にも日本のアニメや漫画を愛してやまないファンが大勢います。特に、『ドラゴンボール』や『スラムダンク』、『ポケットモンスター』等の日本アニメが中国でテレビ放送され、青少年たちの心を鷲掴みにしました。90年代から2000年代にかけての時代は、今も「黄金時代」と称され、その時代を歩んで大人になった人たちに偲ばれています。
“次文化”と位置付けられながら、その中ではひと際認知度の高いアニメ・漫画・ゲームは、“ACG(Animation・Comic・Gameの総称)”とカテゴライズされています。
“ACG”にハマっているファンは、“御宅族”、文字から分かるように、日本の「オタク」から生まれた舶来語―として広く認知されていましたが、最近では別の名称が流行り始めました―――“二刺螈”です。“二次元”という言葉の音を取り、取扱注意のニュアンス込めた“刺”と、“螈”という動物にかけた造語です。
日本人が「オタク」に対してネガティブなイメージを拭えないのと同様に、中国語の“二刺螈”にも皮肉や自嘲の意が込められており、ある意味ではサブカルの理解され難さを体現しているとも言えるでしょう。
例文①
“二刺螈”是种两栖生物,他们游走在现实生活的三次元和虚拟的二次元之间,寻找自己的安身之处。
“二刺螈”は両生類の生き物である。彼らは三次元の現実世界と二次元の虚構世界を行き来し、自分の居場所を探している。
※“二刺螈”:ACGを愛する人たち。“二刺猿”とも。マイナスに捉えられやすいが、堂々と胸を張って宣言すれば、それこそ真実の愛だろう。
例文②
然ACG圈中有很多梗都源自日本动漫,比如“空耳”、“都是○○的错”、“战五渣”。
“ACG”界隈によく見られるネタ台詞の多くは日本のアニメから来ている。例えば“空耳(聞き間違い)”、“都是○○的错(全ては○○のせいだ)”、“战五渣(戦闘力たったの5で役立たず)”。
※梗:ネタ。名場面や名台詞がヒットし、様々な場所で転用される時にそう呼ぶ。上文の「○○」に「世界」、「時臣」、「お前ら」のどれを使うかで、オタク歴が分かるらしい……?
例文③
各位观众注意,前方高能!
視聴者の皆さん、ここからが見所です!
※前方高能:ここからが見所/重要なシーンだ。ロボットアニメでお馴染みの「前方、高エネルギー反応を確認」を転用した言葉。これからの展開にご注意を、と言う意味で弾幕コメントによく用いられる。
今回紹介した白伊先生のコラムは『聴く中国語』2023年8月号に掲載しております。
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