数千年の歴史を持つ上古の奇書『山海経』には、数々の神話や奇獣が収められており、その影響は現代のドラマや映画にも見ることができます。時を超えて魅力を放つ古代書物『山海経』に出てくる奇獣を集めました。その神秘的で魅力的な20の存在について、一緒に見てみましょう!
『山海経』とは…
中国大陸で書かれた地理書。先秦時代(紀元前4世紀 – 3世紀頃)にかけて執筆されたとされ、世界最古の地理書とされる。神話も多く書かれ、古より伝わる神秘的な奇獣が多数登場します。
近年ドラマやアニメでも奇獣を題材にした作品も多く人気となっています。2023年、CCTVがドキュメンタリー番組『山海経奇』を放送し再度ブレイクしています。
今回は特別に図鑑形式で、その中の奇獣を20選でご紹介させていただきます。
- 応龍 yìng lóng(おうりゅう)
- 鳳凰 fèng huáng(ほうおう)
- 畢方 bì fāng(ひっぽう)
- 九尾狐 jiǔ wěi hú(きゅうびきつね)
- 饕餮 tāo tiè(とうてつ)
- 混沌 hùn dùn(こんとん)
- 窮奇 qióng qí(きゅうき)
- 貔貅 pí xiū(ひきゅう)
- 獬豸 xiè zhì(かいち)
- 独角兽 dú jiǎo shòu(ユニコーン)
- 鲲鹏 kūn péng(こんほう)
- 白泽 bái zé(はくたく)
- 何罗鱼 hé luó yú(から)
- 虎蛟 hǔ jiāo(ここう)
- 九凤 jiǔ fèng(くほう)
- 天狗 tiān gǒu(てんこう)
- 旋龟 xuán guī(せんき)
- 赢鱼 yíng yú(らぎょ)
- 蛊雕 gǔ diāo(こちょう)
- 烛龙 zhú lóng(ちゅーろん)
応龍 yìng lóng(おうりゅう)
外見:普通の龍に巨大な翼を生やしている
子孫:鳳凰、麒麟
象徴:雨の神様
鳳凰 fèng huáng(ほうおう)
外見:鶏に似ていて色とりどりの羽毛。体に「徳・義・礼・仁・信」の文様がある
特徴:歌いながら舞い踊る
象徴:天下泰平
畢方 bì fāng(ひっぽう)
外見:鶴似。1本足で赤いまだら模様のある美しい青い羽毛。白いくちばし
特徴:鳴き声が自分の名前「ひっぽう」
象徴:火の神様
九尾狐 jiǔ wěi hú(きゅうびきつね)
外見:4本足で9本の尾を持つ
特徴:人食であり人にも食べられる
象徴:子孫繁栄
饕餮 tāo tiè(とうてつ)
外見:羊似。人の手と顔を持ち、鳴き声は赤ん坊、大きく裂けた口に鋭い牙、目は脇の下
特徴:大食漢。自分の体まで食べる
象徴:欲張りで身を滅ぼす
混沌 hùn dùn(こんとん)
外見:6本足に4つの翼。頭部は目鼻や耳のない肉の塊
特徴:何も見聞きできず、善悪を区別できない
象徴:人間の盲目、無知
窮奇 qióng qí(きゅうき)
外見:翼の生えた虎
特徴:人食。人々が争うのを見て悪いほうに加勢する
象徴:人間の悪念
貔貅 pí xiū(ひきゅう)
外見:獅子似。頭部は龍。口はあるが肛門がない
特徴:飛べる
象徴:蓄財
獬豸 xiè zhì(かいち)
外見:獅子似の一角獣
特徴:知能が高く人の言葉を理解する。善悪を区別できる。邪悪な人間を見つけると、角で突いて押し倒し腹を食べる
象徴:公正な裁き
独角兽 dú jiǎo shòu(ユニコーン)
外見:一本角の馬。種類が多く体が金色の「カンソ」、白色で牛尾の「ボツバ」同じく白色で尾が黒い「ハク」など様々
特徴:「ボツバ」は水に棲む。「ハク」は太鼓のような声
象徴:火をふせぐ
鲲鹏 kūn péng(こんほう)
外見:何千マイルもある大きな魚であり、天に垂れ下がる雲のような羽を持つ鳥
特徴:鯤(こん)が鳥に化して鵬(おおとり)になる
象徴:高い志、大胆な精神、自由の追求
白泽 bái zé(はくたく)
外見:白い獅子。頭に牛のような二本の角、下顎に山羊のような髭、額に眼がもう一つ。胴体側面に眼が三つ、もう片方の側面にも三つあり計九つの眼をもつ
特徴:人間の言葉を解し、万物の知識に精通する
象徴:魔除け
何罗鱼 hé luó yú(から)
外見:ひとつの頭に胴体が10つある怪魚
特徴:犬のように吼える。北山である譙明山を流れる譙水に多数生息。食べると腫物が治る。
象徴:幸運
虎蛟 hǔ jiāo(ここう)
外見:頭が鳥似で、蛇の尾を持つ魚、龍族
特徴:祷過山(とうかざん)から海に流れる泿水(ぎんすい)に棲息。その肉を食べると、疾病にならず、痔も治る
象徴:大いなる知恵、勇気、力、勇敢、傑出、名誉
九凤 jiǔ fèng(くほう)
外見:鳥の胴体に九つの頭を持つ人面鳥身
特徴:大荒の北極櫃という山に棲む。おめでたい鳳凰と九という数字を合わせ作り出された
象徴:吉祥、幸福
天狗 tiān gǒu(てんこう)
外見:狸のようで白い顔の犬
特徴:特別な霊能がある狗(犬)の類族の狸のようなもの
鳴き声:「りゅーりゅー」
象徴:厄除け、神通力
旋龟 xuán guī(せんき)
外見:鳥の様な頭、蝮のような尾っぽ、亀の姿
特徴:身に付けると、耳によい。手足に出来たタコも治る。
鳴き声:木を裂く音
赢鱼 yíng yú(らぎょ)
外見:鳥の翼とオシドリの声を持つ魚
特徴:現れると、洪水。
象徴:変化と新たな始まり、早期の警告と啓示
蛊雕 gǔ diāo(こちょう)
外見:ワシのようで角がある
特徴:南山の鹿呉山に流れる川「澤更」に棲む。雕(尾が長く羽根が大きい鷹のような鳥)で角があり、赤ん坊のような声で鳴く、人喰い獣
象徴:強さ、勇気、未知への探求心
烛龙 zhú lóng(ちゅーろん)
外見:上半身は人、下半身は蛇、色は赤く、縦に長い目をしている龍
特徴:昼に目を開き、夜には閉じる。仲山の神様
象徴:昼夜・時間を司る神
これらの「山海異獣」は『山海経』のほんの一部にすぎません。他にもご紹介できなかったたくさんの妖怪、精霊、ふしぎな草花があります。
『山海経』の世界では、万物はみな魂を持っています。連山は女娲となり、女娲は万物となる。これは生命の起源に対する想像です。伏羲は八卦を制し、乾坤を定める。これは宇宙の秩序に対する理解です。燭龍が目を開けば日とし、目を閉じれば夜とする。これは日月・昼夜に形を与えているのです。
『山海経』には先人の世界に対するロマンティックな想像と、心からの畏敬の念が隠されていると言えるでしょう。
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