ちょっと待って!そのレシート捨てるべからず! 

七海先生の中国語あれこれ

中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習にまつわるお話をご紹介しています。

今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、ちょっと待って!そのレシート捨てるべからず!というテーマのコラムをご紹介します。

執筆者:七海和子先生

日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。

 皆さん、こんにちは。七海和子です。 

 中国語のクラスをいくつか担当していますが、どのクラスでも質問されるもののひとつに「数字が聴き取れないのですが、どうしたらいいですか」があります。数字…。いやですよね、気持ちわかります。今回はどうすれば数字が聴き取れるようになるかを、一緒に考えてみましょう! 

 まず、なぜ数字が苦手なのかを考えてみると、そもそも「数字を言い慣れていない」という問題が浮上します。皆さん、今日一日、何回中国語で数字を言いましたか?「1回も言ってないや」という人が大半なのでは?ちょっと意外に思われるかもしれませんが、数字の聴き取りを強化するには、まずは口からすらすら数字が出てくるようにならないと、耳が追いついてきてくれないのです。でも、ご安心を。数字を口にする機会って、身近にごろごろ転がっているのです! 

 皆さん、買い物しますよね?その時、レシートを捨ててしまっていませんか?ちょっと待って!レシートって、実は数字ばっかりなんです。捨てる前に、まずレシートを隅から隅まで「読んで」みましょう。この時、声を出すのも重要です。レシートに書いてある日付、時間、場合によっては会員番号なんかも記載されているかもしれませんね。そして購入した物品の値段。まずはこれらを読んでみましょう!すぐに反応できますか? 

 例えば「時間」。レシートに「16時5分」と書いてあったとします。あなたならどう読みますか?答えは“shíliù diǎn líng wǔ fēn(十六点零五分)”です。分の部分が一桁の場合、ただの“wǔ fēn”ではなく“líng”を入れるところがポイント。では12時間制ではどうでしょう。「午後4時5分」と言いますね。それは“xiàwǔ sì diǎn líng wǔ fēn(下午四点零五分)”です。それでは「金額」に「1090円」と書いてあったら?“yìqiān líng jiǔ shí rìyuán(一千零九十日元)”です。“一”は後ろに来る単語の声調によって変調するのも注意しなければなりません。ほら、ただのレシートの数字ですが、読み応えがあるでしょう? 

 レシートにインボイスの番号が記載されていたら、まず数字をそのまま読んでみて、その次に桁をつけて読んでみます。大きな桁の数に挑戦ですよ!インボイス番号は13桁。ということは…「兆」ですね。T1234567891012というインボイス番号を読むとしたら、日本語で「1兆2345億6789万1012」と読めますよね。ところが!中国語では “zhào”はほとんど使いません。“”の代わりに“亿万”を使うのです。つまり、中国語では“一万两千三百四十五亿六千七百八十九万一千零一十二(Yíwàn liǎngqiān sānbǎi sìshíwǔ yì liùqiān qībǎi bāshíjiǔ wàn yìqiān líng yīshí’èr)”となるのです。これを知っていれば中国人の方に“万亿”と言われたら“兆”のことだとすぐ理解することができます。 

 車のナンバーを読み上げるのもよい練習です。車のナンバーは3桁や4桁のものがありますので、これに桁をつけて読んでみましょう。間に「0」が入っていたら、そこにも注意してくださいね。ぐずぐずしていると車はあっという間に走り去ってしまいますよ。これは瞬発力が鍛えられます。 

 どうですか?レシートを含め、身の回りには数字が溢れているでしょう?とにかく正確にすばやく言える練習を繰り返してください。自力ですらすら言えるようになったら、次は日本語のニュースに挑戦です。ニュースの中に数字が出てきたら、その数字をすばやく中国語で言ってみましょう。数字を見るのではなく、「耳で聴いて」反応する、ということが重要です。これができるようになったら中国語で練習します。『聴く中国語』の《新闻聚焦(ニュースフォーカス)》や、『NHK WORLD』の中国語ニュースなどがおすすめ。ニュースは数字だけでなくパーセンテージも出てきますから、よりいろいろな数字に対応する力がつきます。最初は数字だけに集中して、位取りに注意しながら聴きましょう。余裕があれば数字部分だけでもよいので、シャドーイングしてみてください。今までの練習で数字を口にすることは慣れているはず。こうすることで、より数字がはっきりと聴き取れると思います。 

 数字は慣れなので、いっぱい口にして、いっぱい聴くこれにつきます。そのうちにあら不思議!数字がすっと聴き取れるようになりますよ。皆さん、楽しんで練習してくださいね。 えてくださいね!皆さんがもっと楽しく気楽に中国語を口にすることができますように! 


今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2025年5月号に掲載しております。

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