歴史的芸術品に触れ、個性的なミュージアムグッズを手に取り、SNSで写真や感想をシェアする――これが近年中国で流行っている「展覧会ブーム」だ。今、中国では博物館・美術館巡りをレジャーやコミュニケーションの一つとして楽しむ人がますます増えている。今回は、特に人気の中国の博物館・美術館の20施設とその代表所蔵作品をご紹介。中国やその都市に興味のある人はぜひ訪れてほしい。
中国各地のおすすめ博物館
中国の博物館は多くの場合、時系列で物語のようにその都市や地域の文明の発展を紹介している。一通り見るだけで、その都市の過去と現在を知ることができ、知的な学びに満ちた体験になるだろう。
陝西歴史博物館(西安市)

陝西歴史博物館では、秦・漢・唐・元・明・清といった各時代の貴重な文物を通して、千年の古都・西安に積み重ねられてきた、歴史と文化の奥深さを体感することができる。なかでも所蔵品である「舞馬銜杯倣皮囊式銀壺」は、盛唐期の民族融合と文化的繁栄を象徴する逸品である。

甘粛省博物館(蘭州市)

「甘粛省博物館」もまた、その土地の自然や歴史、文化などを幅広く紹介する総合的な地域博物館だ。新石器時代の「彩陶人形双系瓶」をはじめ、東漢時代の「銅奔馬」や、元代の「蓮花形玻璃托盞」などが所蔵されており、それらを目にすれば、誰もが蘭州という西域の名だたる都市に改めて感心せずにはいられない。


故宮博物院(北京市)

北京の中軸線の中心に位置する故宮博物院は、まさに別格の存在だ。その前身は明・清時代の皇宮であり、建物自体が極めて貴重な歴史建築として知られている。収蔵されている文物の数は実に186万点を超え、中国全土の博物館の中でも最大規模を誇る。今年(2025年)はこの故宮博物院の創設100周年にあたり、展覧会の開催も例年以上に充実している。訪れる人は、明・清王朝の宮殿空間に身を置きながら、さまざまなテーマ展で国宝級の文化財を間近に見ることができるほか、100周年を記念した限定ミュージアムグッズや、故宮のスタンプが並んだ記念帳なども購入できる。

中国国家博物館(北京市)

中国国家博物館は、単独の建物としては世界最大の面積を誇る博物館であり、商代の青銅器「后母戊鼎」や唐代の「三彩釉陶載楽駱駝」などの名品が収蔵されている。『古代中国』や『復興の道』などの常設展のほかに、『中国の食文化展』『中国古代服飾文化展』といったテーマ別展示に加えて、期間限定の特別展も随時開催されており、今年開催された『瑠光璃彩―淄博瑠璃芸術展』は特に大きな話題となった。「どの展示品も息をのむほど美しい」と高く評価されている。

上海博物館(上海市)

中国古代芸術を専門とする大型博物館。収蔵品は約102万点、うち重要文物が14万点。青銅器・陶磁器・書画・玉器などが特に有名。 代表的な展示品:西周・大克鼎、宋・汝窯青磁盤犠尊、唐・彩陶乗馬俑 など

南京博物院(南京市)

中国初の「現代的博物館」とされる。収蔵品は43万点。歴史館・芸術館・特別展館・民国館・デジタル館・無形文化遺産館で構成。無形文化遺産館は無料で開放されており、伝統的な手工芸を体験できる。 代表的な展示品:西漢・金獣、明・洪武釉裏紅梅瓶(歳寒三友文)、元・青花「蕭何月下追韓信」図梅瓶 など。

秦始皇帝陵博物院(西安市)

兵馬俑や彩色銅車馬を擁する大型遺跡博物館。3つの俑坑に約8000体が確認され、遺跡公園とともに見学可能。
代表的な展示品:兵馬俑、彩色銅車馬

河南博物院(鄭州市)

河南省鄭州市にあり、中原文化を代表する博物館。収蔵品は約17万点。常設展「泱泱華夏・択中建都」。2024年には「考古ガチャ」で販売したミュージアムグッズの売上が2億元を超え、話題に。
代表的な展示品:新石器時代・賈湖骨笛、西周・蓮鶴方壺、武則天の金簡など。

湖北省博物館(武漢市)

楚文化研究の中心機関。収蔵品は24万点。戦国時代の礼楽文化を復元した「編鐘演奏ホール」では、毎日演奏が行われている。
代表的な展示品:曾侯乙編鐘、越王勾践剣、元・青花『四愛図』梅瓶など。

湖南博物院(長沙市)

馬王堆漢墓出土品の唯一の所蔵機関。収蔵品は18万点。常設展『馬王堆漢墓陳列』のほか、漢代の生活を再現したデジタル展示もある。
代表的な展示品: 帛書『周易』、素紗襌衣、T形帛画、保存状態良好な前漢の女性ミイラなど。

蘇州博物館(蘇州市)

忠王府を本館とし、ベイ・ユンミン設計の新館を併設。明清書画や考古資料、古籍を特色とする総合博物館。 代表的な展示品:五代秘色瓷蓮花碗、真珠舍利宝幢など

桂林博物館(桂林市)

広西チワン族自治区桂林市にある総合博物館で、2016年に新館を開館。所蔵品は約4万点に及ぶ。
代表的な展示品:明代梅瓶、明清書画、外賓贈答品や少数民族資料など

中国各地のおすすめ美術館
中国の美術館やアートスペースの展覧会も、今や誰にとっても身近で親しみやすいものとなっている。名作を鑑賞するほか、アートグッズも必見。近年では、照明演出や音響、デジタル映像技術などを駆使したアート展も増えているので気軽に楽しみたい。
中国美術館(北京市)

北京市東城区五四大街1号に位置する国家級の美術館であり、中国本土で最大規模を誇る。中国近現代の美術作品の収集・展示・研究を主軸とする造形芸術の専門館である。

中華芸術宮(上海市)

上海浦東に位置し、2010年上海万博の中国館を転用した建物である。床面積は16.6万㎡で、アジア最大規模の美術館。
常設展『海から上る明月―中国の近現代美術の源』(海上生明月—中国近现代美术之源)では、清末の「海上画派」から中国近現代美術の系譜を年代順に展示している。さらに、名作『清明上河図』の動画化展示も人気を博している。

広東美術館(広州市)

1997年に建設された国家重点美術館のひとつである。所蔵品は4万点以上におよび、中国画・油画・版画・彫刻からインスタレーション・映像などの現代作品まで多岐にわたる。五大研究・収集領域(広東美術、中国近現代美術、現代芸術、華人芸術、国際芸術・美術文献)を構築し、華南最大の美術研究拠点として機能している。

浙江美術館(杭州市)

2009年に設立され、杭州西湖の近くに立地する。浙江省出身または浙江地域で活動した美術家の作品収集を重点とした美術館である。

成都市天府美術館(成都市)

四川省成都の天府芸術公園内に位置し、総面積は約4万㎡、展示面積は約1.3万㎡に及ぶ。成都市当代美術館や人文芸術図書館とともに、多機能の文化複合施設を構成しており、都市の公共文化プラットフォームとして、芸術と自然の融合を促進することを目的としている。展示は成都出身の芸術家や現地文化に焦点を当てた展示が多く、建物の屋根は市花・芙蓉の花弁をモチーフとしている。

江蘇省美術館(南京市)

南京市の心臓部に位置し、その優雅な建築と豊富な展示内容で訪れる者を魅了。1936年に開館した江蘇省美術館は、中国最古の現代美術館の一つである。常設展は、中国絵画や書道、彫刻など多彩なコレクションで構成されている。
ユーレンス現代芸術センター(北京市)

北京・798芸術区に位置し、北京市文化局認可の民間美術館である。国際的な芸術機関と連携し、国内外の現代美術作家による展覧会とパブリックプログラムを提供している。
安徽省美術館(合肥市)

安徽省合肥市に位置し、2022年5月に開館。省立の総合美術館として、美術作品の展示・収集・研究・交流・教育を一体化した現代化施設である。建築はソビエト様式を模しており、常設展には『潘玉良作品展』と『安徽古生物学展示』の2展がある。

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