初体験・ドラゴンボートレース

コラム

『聴く中国語』2023年1月号より、現在上海外国語大学で学ぶ水上華さんのコラム「私の中国留学記」を連載しています。今回は第九回「初体験・ドラゴンボートレース」

コラムニスト 水上華
日本と中国のハーフ。日本で生まれ育ち高校三年生の時に中国への留学を決め中国の大学に入学するも、新型コロナウイルスの影響で一年生の間は中国への渡航が叶わず日本でオンライン授業を受けた。

端午節の伝統行事

中国では毎年旧暦の5月5日に端午节と言われる伝統節句を祝う。これは春節、中秋節に並ぶ中国の三大伝統節句とされている。今年の端午節は現在の暦で6月22日である。端午節は古代中国の政治家,詩人である屈原(くつげん)の供養祭であるとされており、中国では端午節に龙舟(ドラゴンボート)のレースを行う伝統がある。

ドラゴンボートレースとは、龍の頭や龍の尾の装飾を施した細長い手漕ぎ舟に、舵取り1人、太鼓手1人と18~20人の漕手が乗り込みタイムを競う競技である。このドラゴンボートレースは屈原が川に身投げして命を落とした際、その亡骸が魚に食べられないようにと、屈原を慕う人々が舟で川に出て太鼓を鳴らすことで魚を威嚇したことに由来している。 

留学生のドラゴンボートレース大会に参加

6月22日の端午節に先立ち、6月10日、上海・华东理工大学で「第十三届上海高校外国留学生龙舟赛」が開催された。合計32の大学から800人以上の留学生が集まり、中国の伝統文化ドラゴンボートレースの大会に参加した。私もこの大会に参加することになり、生まれて初めてドラゴンボートに乗った。

大会前、私たちの大学は一度しかドラゴンボートの練習をすることができなかった。参加者のほとんどが初心者だったため、パドルの持ち方・姿勢・漕ぎ方などを一から教えてもらった。その後、すぐに漕いでみたのだが、水が想像以上に重いのに加え、上半身全体を使って漕ぐため、少し漕いだだけですぐに疲れてしまった。それだけでなくボートを漕ぐ際、鼓手の鳴らす太鼓の音をよく聞きタイミングを合わせてパドルを漕がなければ船が前に進まないのに加え、前後の人のパドルにぶつかってしまい手を怪我してしまったりするのだ。私も練習の際、一度パドルを漕ぐタイミングが前の漕ぎ手と合わずに手を怪我してしまった。指が取れたかと疑ってしまうくらい痛かった。そのためパドルを漕ぐ時は、疲れてもしっかりと鼓手の叩く太鼓の音を聴かなければならない。想像以上の大変さに少し驚いたが、久しぶりに体を動かすことができ、辛さ半分楽しさ半分で漕ぐことができた。

練習から1週間後。6月10日大会本番は、朝7:30に出発し華東理工大学へと向かった。着いたらすぐ、最後にもう一度30分ほど練習時間をいただいた。隣のレーンで他大学も練習していて、チラッと見ると、私たちとは比べ物にならないほど上手く、一度の練習でここまで上手くなるものなのかと目を疑った。これはやばいと思い、皆でその30分の練習に熱心に取り組んだ。練習が終わった後、隣のレーンの大学の方と話したら、彼らは2ヶ月間毎週2〜3回は練習していたという。道理でうまい訳だと納得した。彼らの話によると、学校によっては大会当日に初めて練習する大学もいるらしい。そう考えると、大会前に一度練習できただけでもよかったなと思った。

練習が終わった後は、食堂で昼ごはんをいただいた。その後、当日含めて2回の練習では明らかに足りないことを皆わかっていたため、場所を探しエアーでドラゴンボートを漕ぐ練習をした。側から見たら無意味な練習だったと思うが、それくらい私たちは練習が足りていなかったのだ。集合までの時間を練習しながら潰していた。 レースが始まる時間になり、集合場所まで向かい開幕式が始まった。開幕式では様々な演技が行われ、私たち出場者はボートの上から見ていた。その日は最高気温が33度を超えており、更に水の反射もあり暑さにやられ皆グダっとしていた。開幕式が終わりいざレースが始まると皆シャキッとし、出発の位置にスタンバイを始めた。「パーン」という音とともに一斉に皆で漕ぎ始めた。レース本番では、隣の太鼓の音なのか自分達の太鼓の音なのか気を抜いたらわからなくなりそうになりながら、必死に漕いだ。結果は1分04秒で21位という結果で終了した。良い結果だったとは言えないが、中国の伝統行事に参加でき、とても良い経験になった。

本コラムは『聴く中国語』2023年9月号に掲載しております。

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