今回は、最近高評価の中国ドラマ《山河令》(The word of Honor)をご紹介します。
この作品の原作は《天涯客》という小説。2021年2月22日に上映した後、中国で大ブームを引き起こし、中国の豆瓣(douban カルチャーSNS)では、すでに8.6点の高評価を得て、世界でも話題になる大好評作になってます。
この作品は、一体どうしてここまで人をひきつけたのでしょうか?今回はその理由を8つまとめてみました。
人物像は非常に立体的
この作品は本質的にいえば、侠客ドラマです。侠客世界の人情寒暖がメインのテーマで、主人公は2人の複雑な人生を歩んできた20代後半の侠客です。
一人は“周子舒Zhōu Zǐshū”と言って、貴族出身が、以前四季山荘で武術を習って、その後は晋王の手先、暗殺組織“天窓”の首領となったが、心身が疲弊し、朝廷と殺戮から遠く離れようと決め、自分に残虐な仕置を施し(“七窍三秋钉”、体に7つの釘を打ち込む刑)、退官し、名前を“周絮Zhōu Xù”に変え、流浪生活を始めました。この仕置を受けたことで、周子舒の寿命は3年ぐらいしか残らなくなりますが、彼は人生の最後の3年間で自由に生き、不本意なことをやらずに、自由の身で死にたいと思っていました。
もう一人は“温客行Wēn Kèxíng”、神医谷の出身で、父親は侠客で医者でしたが、紛争に巻き込まれて、温客行まだ9歳のころ、両親が惨殺されました。温客行は生き残ったが、“鬼谷”という侠客世界で悪名高いところで育てられました。彼は復讐の一心で、鬼谷の「谷主」となり、血で血を洗うことを計画していた。
谷主としての温客行は残虐な行為を振る舞っていたが、谷を出たら、すぐ風雅で奥ゆかしい、かっこいい青年の姿になる。周子舒に出会ったあと、彼ははじめて自分の中の天然さ、かわいさ、やさしさ、脆弱さを見せることができました。
二人とも、暗くて残虐な一面があって、明るくて愛されたい一面がある。二人の立体的な性格は作品の成功するもっとも重要な原因の一つとはいえるでしょう。
顔が美しい、演技も素晴らしい
温客行を演じた龚俊(ゴン・ジュン)と周子舒を演じた张哲瀚(チャン・ジョーハン)は、本当にすごい演技力を見せてくれました。
ゴン・ジュンは1992年11月29日生まれの身長186のソース顔俳優。普段はいつでも無邪気で、親近感を感じさせるハッピーボイだが、ドラマでは、温客行の自信、優雅さ、無邪気さ、そして残虐さを非常によく演じていました。特に周子舒を見ているとき、温客行の表情には愛と依存に満ちていました。
そして、1991年5月11日生まれ、身長181のチャン・ジャーハンも、同じく少年感溢れている俳優です。歌もうまいし、運動も上手。彼は以前の作品では、大体タフな男性を演じていましたが、 『山河令』では、女性よりも美しいまなざしと笑顔を見せ、観客の心を鷲掴みました。特に第6話で初めてウェンに素顔を見せたシーンでは、あまりの美しさで、ファンたちに「老婆(妻)」と呼ばれるほどでした。
6話の周子舒
全体的に見ると、前半では、温客行は美しく神秘的な笑顔と目つきで無数の観客の心を捉え、第6話から、周子舒は複雑な感情を潜めた美しい表情で、われわれを魅了しました。特に、35話のところ、周子舒は悲しさと嬉しさを抑制きれなく涙を流すシーンは、本当に我々の心を震わせました。美しすぎます……
ゴン・ジュンとチャン・ジョーハンの二人は、いずれも努力家で完璧主義者で、役になりきって、すごい演技を捧げてくれました。見れば感動します!
もちろん、2人の主人公だけでなく、脇役も素晴らしいパフォーマンスをしています!
チャン・ジャーハン张哲瀚Instagram
ゴン・ジュン龚俊Instagram
衣装が美しい
この作品では、衣装の色やデザインがとても洗練されていて、こだわりがすごいです。とくに温客行が谷主として、殺意を全開している際に着る真赤の衣装は、製作に数ヶ月かかったそうです。
衣装も役づくりに多大の影響を与えています。例えば、「天窓」時代の周子舒はいつも黒を着て、その時期の威圧感、憂うつ感を表し、「天窓」を離れた後、彼は白、灰色、水色の服を着始め、自由に放浪している心境を見せてくれました。一方、温客行の服は色とりどりで、谷主の赤、周子舒と知り合った後の白、ピンクと紺、秘密を明かしていないときの紫、そして、復讐したあとの白と青等、その性格と心境の複雑な多面性を表しています。
ストーリーがいい(ネタバレあり)
ドラマはちゃんと原作の小説を尊重し、合理的にリメイクし、無駄のシーンもほとんどありません。
筋を簡単に言えば、これは武侠世界における20年ぶりの騒乱を物語っている。騒乱の起因は、20年前、天下の武術の秘伝を集めた書庫を創設した青年容炫(Róng Xuàn)の死でした。当時、書庫の鍵――瑠璃甲を手に入れるため、多くの人が戦いに巻き込まれ、主人公の温客行の両親もその戦いで亡くなったのです。
20年後、温客行は、鬼谷の谷主になり、大きな復讐計画に乗り出しました。彼は瑠璃甲が再び世間に現れたという童謡を広め、かつて書庫の共同創設者たち(【五湖盟】のリーダーたち)と書庫を喉から手が出るほど欲しがる人々が殺し合うように計画し、醜い世の中を滅ぼそうとしたのです。
一方、周子舒は16歳で四季山荘のリーダーとなったが、晋王の手先、「天窓」の首領になってから、四季山荘の部下や後輩たち80人がつぎつぎと権力闘争の犠牲品となって亡くなりました。最も大切な後輩「九霄」まで失ったあと、彼は自分を責めるあまりに、生きていく意欲がなくなり、自分に釘刑を行って、晋王から、「天窓」から、離れました。
(以下はネタバレあり)
ストーリーは、このような背景から始まりました。主人公二人は偶然のように出会ったが、実はお互い20年前からすでに知り合っていました。温客行は周子舒の足の運び方とその佩刀を見て、周子舒は自分の先輩だったことに気づきましたが、それを明言せず、一方的に好意を示しつづけていただけでした。それは自分の鬼谷の谷主という身分を受け入れることができないのではないかと心配していたからです。
この時期の周子舒はせっかく朝廷から逃げ出し、世間と絡むつもりがなかったので、温客行を避け続けていました。だが、騒動で家族が殺された少年張成嶺を見て、やはり助けずにいられませんでした。
周子舒は釘刑を受けたので、体が弱くなりつつあって、戦闘力も昔の半分しか残っていません。そんな彼を、温客行は何度も救って、その病気の治療に助けようとしていました。その後、温客行は一度周子舒の本名を呼んだことから、周子舒も温客行の素姓に気になり始め、自分の素顔を示すことで、相手も本当の自分を見せてくれることを促しました。これは周子舒が温客行を愛のある人間の世界に連れ戻そうとする最初の段階になります。
しかし、温客行は周子舒の命が2年しか残っていないことを知ったとき、せっかく得た知己「soul mate」がまた失ってしまうと感じ、再び絶望に陥りました。
一方、この時の周子舒も心境の変化がありました。彼は生きていきたいという願望が再燃したと同時に、温客行と弟子の張成嶺のために、危険を冒すことをいとわなくなります。
江湖の人々は温客行の期待通りに再び瑠璃甲を求めて戦い始めました。武侠世界のトップに立っている「五湖盟」の五人のリーダー(高崇、赵敬、陆太冲、张玉森、沈慎 名字の違う5兄弟)は、20年前死んだ「容炫」の親友で、それぞれ一枚の瑠璃甲を持っています。しかし、この五人の中のだれかが20年前「容炫」を毒殺し、温客行の父親「温如玉」を間接的に殺害していただけでなく、20年後、張成嶺の父親「张玉森」をも殺したと推測されます。
温客行はその人は高崇だと思いこんでいて、その醜態が暴れるのをたのしみにしてましたが、「五湖盟」の英雄大会では、高崇は自殺で自分の無実を証明しました。温客行は自分の間違いを気づき、動揺しはじめたのです。
だが、周子舒は温客行を責めたりはしませんでした。彼は温客行と共にその両親の死の真相を追究し、ついに彼が自分の後輩「甄衍Zhēnyǎn」だったことを確認しました。と同時に、温客行が生きていること自体は、世間にまだ愛があるからだと温客行に気づかせました。これは周子舒が温客行を救う第二段階になります。
しかし、温客行は劣等感があって、自分は周子舒のような輝かしい存在にふさわしくないと感じ、鬼谷の主という身分を明かすことができませんでした。だが、周子舒はすでにそれを知っていたにもかかわらず、温客行の味方になって、彼とともに戦い、彼の不幸は彼自身のせいではないと、自分の言動で伝えました。
温客行はついに安堵を得て、最後の復讐計画に乗り出した。本当の敵を打ったあと、温客行はやっと堂々と、晴れ晴れとした気分で生きていくことができるようになりました。
ストーリーの最後、周子舒に救われた温客行も周子舒の命を救いました。一体どういったエンディングだったかを気になる方、ぜひドラマを見てください。
脇役のストーリーもGOOD(ネタバレあり)
温客行と周子舒が主人公だが、周囲の人物像も非常に立体的です。たとえば、温客行の義妹兼侍女顾湘(GùXiāng)と曹蔚宁(Cáo Wèiníng)の間のラブストーリー、および蝎王(Xiē wáng)と赵敬(Zhào Jìng)の間の曖昧な親子愛も、ドラマのストーリーを豊かにしています。
特に顾湘と曹蔚宁がついに結婚する際、二人とも曹蔚宁の叔父の莫怀阳(Mò Huáiyáng)に殺害され、温客行は唯一の家族を失ってしまいます。このシーンは、シェイクスピア風の悲劇感を醸し出していて、かなり泣けます。
セリフが美しい、隠されたセリフもかなり面白い
ドラマのセリフは中国の経典や古詩から引用されたものがたくさんあります。そのためか、温客行は周子舒をナンパする際、かなり上品に見えます。
例えば “你若不在了,千山暮雪,我孤翼只影向谁去?(あなたがいなければ、雪に覆われている山々を目の前に、私一人でどこに向かって飛んでいけばいいのか?元好问《摸鱼儿·雁丘词》)”
“幸得君心似我心”(幸いなことに、君の心が私の心に似ている。)
“山河不足重,重在遇知己”(山と川よりも、知己のほうが大事)
“世事蹉跎,生死契阔,相见恨晚叹奈何”(人生を虚しく過ごし、生と死、出会いと別れを繰り返す、どうして我々会うのがこんなに遅かったのか。)など。
しかし、時代劇ぽいですが、一切古臭くなく、現代的な話し言葉がメーンです。面白いセリフもいっぱいあります。例えば、
“烈女怕缠郎”「烈女は諦めない男に負ける」
“真是缺了大德!”「ほんとうに大嫌い!」
“幼稚!”「バカ!」
“滚去睡!”「さっさと寝なさい!」
“世界上最可爱的是人,是腰细腿长,又嘴硬心软的人!”「世界で一番かわいい人は、腰が細く、足が長い、言葉がきついけど、心が優しい人!」など。
また、放送制限のため、一部のちょっと露骨なセリフが、吹き替えのときに変更されました(中国のドラマは母語話者の役者が演じたとしても、編集時にプロの声優に吹き替えしてもらうことがよくあります)。しかし、それはかえって、観客の興味を高めました。
例えば、吹き替えで「什么都行!(何でもいい!)」との一文は、実際は「以身相许!(結婚を約束する!」でした。
吹き替えで、「看过(我的真面目)之后,你就不会把我当朋友了。(私の本当の姿を見ると、私を友達とは見なさなくなるだろう」、実際には「你就不会理我了(私を相手にしてくれなくなるだろう)」と言っていました。
ほかに、「美救英雄(美人が英雄を救う)」、「情场得意,战场失意(恋に満足する、戦いに挫折する)」などもあります。唇の動きでセリフを推測することは、このドラマのもう一つの楽しみ方になっています。
最後に、どうしても言及したいのは、いくつかの曖昧な告白セリフです。作品に直接な「愛」の表現はなく、過度の体の接触もありません。しかし、愛を表す言葉はたくさんあります。例えば、
“你是外人吗?”「あなたは他人ですか?」
“你能不能别死?”「死なないで、いい?」
“活着,有太阳晒着,有个人的名字可以这么叫着,真好!”「生きていて、太陽に当てて、名前をこのように呼ばせてもらう人もいて、なんて幸せだ!」
“君子死知己,我为你冒这个险又如何?”「士は己を知るものの為死す。私はあなたのためこの危険を冒して何が悪いの?」
“能好好活着,谁想死啊?再说,之前不是没遇见你吗?”「生きることができるのであれば、誰が死にたいの?まして、前はまだあなたに会ってないんじゃない?」
聴くだけでキュンとするセリフがまだまだあります、ぜひドラマをみてみてください。
映像がきれい
武侠ドラマとして、アクションシーンも注目に値します。主人公を含め侠客たちの戦闘シーンはとても美しくてかっこいいです。画面の色や見せ方もとてもセンスがあって、味があります。
唯一の弱点はCG効果かもしれません。ただ全体的にみると、完成度がかなり高いので、一部CG効果の問題は大目に見ていいと思います。
音楽も素晴らしい
最後は主題歌やBGMをひとこと言及したい。どれもいい歌です。
その中「孤梦」は主人公を演じていた张哲瀚(チャン・ジェハン)が歌っています。
ぜひ『山河令』をチェックしてみてくださいね!本当におすすめです! !
U-nextで視聴
https://video.unext.jp/freeword?query=山河令&td=SID0065369
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