インタビュー!小説「国宝」中国語訳担当/翻訳家・伏怡琳さん

インタビュー
言葉の世界を自由に旅する――

私は上海出身で、国営企業に勤める両親のもとで育ちました。リストラの波もありましたが、母は独学で会計を学び、不動産会社で財務を担当し、最終的には財務部長にまでなりました。決して裕福ではありませんでしたが、安定した生活を送ることができたのは母のおかげだと思います。

共働きの家庭で自由な時間も多く、中学生の頃は友人から本を借りて、世界の名作を数多く読みました。この経験が、言葉や文章への興味につながりました。

ななぜ日本語を学ぼうと思われたのですか?
中学時代の先生の影響で言葉に興味を持つようになり、将来は言語に関わる仕事ができたらと考えるようになりました。そこに高校時代、日本の漫画に親しんだことが重なり、「学ぶなら日本語」と自然に思うようになりました。

日本語を学び始めてから、現在の業界を選ばれたのですか?
復旦大学で日本語を学び、その後来日しました。進学までは簡単ではなく、東京大学や早稲田大学で研究生として準備を重ねながら、日本文学の道へ進みました。安部公房に惹かれたことが、研究、そして翻訳へとつながっていきました。

翻訳に対する理念や方法論について教えてください。
理想は「作者が中国語で書いたかのように感じられる訳文」です。読みやすさを大切にしつつ、日本語ならではの表現の面白さもできるだけ活かしたいと考えています。また、作品ごとに文体を意識し、翻訳前に近い雰囲気の中国語作品を読むことも心がけています。

『国宝』の翻訳で印象に残っていることは?
長編ならではの人物関係や文体の調整に苦労しましたが、特に歌舞伎の理解には多くの時間をかけました。実際に舞台を観た際には、主人公が現実に存在するかのように感じられ、思わず涙がこぼれたことが強く印象に残っています。

その翻訳を通して得られたものはありますか?
歌舞伎という新しい世界に触れられたこと、そして自分の言語力や知識の課題に改めて気づけたことです。

原作小説と映画『国宝』の違いは?
映画はより「美しく」、小説はより「複雑」だと感じました。小説の方が人物関係や時代背景が丁寧に描かれており、物語に厚みがあります。

中国語と日本語の違いについて
日本語は控えめで含みのある表現が多く、中国語はより直接的で華やかな印象があります。特に広告翻訳ではこの違いが顕著です。また、呼称の使い方にも大きな違いがあります。

好きな作家・おすすめの作家は?
夏目漱石や谷崎潤一郎、安部公房の作品が好きです。中国の作家では馬伯庸や李娟をおすすめしたいです。

AIの発展について
AI翻訳は非常に優秀ですが、文学や広告のような創造性の高い分野では、まだ人の役割が大きいと感じています。翻訳は「自分が訳すこと」そのものに意味がある仕事だと思っています。

学習者へのメッセージ
語学はこれから、より楽しむものになっていくのではないでしょうか。原文で読む喜びや、言葉が通じたときの感動を、ぜひ大切にしてほしいと思います。

翻訳家 

伏怡琳さん

今回のインタビューの詳細や日中対訳は月刊中国語学習誌『聴く中国語』2026年4月号に掲載されています。さらに詳しくチェックしてみたい方は、ぜひご覧ください。

📹️弊社公式YouTubeでも動画を公開中!ぜひご覧ください。

小説「国宝」中国語翻訳 翻訳家・伏怡琳さん 独占インタビュー

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