うっちーの中国語四方山話㉕ あずさ2号―奇数と偶数

中国語学習

あずさ2号―奇数と偶数

中国語語学誌『聴く中国語』では日中異文化理解をテーマにしたコラムを連載しています。

今回は日本中国語検定協会理事長の内田慶市先生が執筆されたコラム、うっちーの中国語四方山話−異文化理解の観点からうっちーの中国語四方山話㉕ あずさ2号―奇数と偶数 をご紹介します。

 日本と中国では奇数と偶数による吉凶の解釈に違いがあるのはよく知られていることです。

大雑把に言えば、日本では奇数が、中国では“好事双对”(良いことは対になる)という成語があるように、偶数が好まれる傾向があります。

ただし、日本の奇数の代表的なものとして結婚式の「三三九度」がありますが、実はこれは本来中国から来たものです。つまり、以前にこのコーナーでも述べたように、中国人にとって最高の数字は「九」なんですね。

 ところで、1970年代に「狩人」という男性デュオが歌ってヒットした曲に「あずさ2号」というのがあります。

好きだった人と別れて、行くはずだった「信濃路」に「8時ちょうど」の「あずさ2号」で新たな旅立ちに向けて出発するというわけですが、この「あずさ号」は今も新宿と松本の間を運行しています。ただ、「8時ちょうど」の「あずさ号」は、今は「あずさ5号」になっています。

さて、問題は「2号」と「5号」という数字です。今のJRでは(他の私鉄についてはよく分かりませんが)東京に向かう列車が「上り」で、東京から出発する列車を「下り」と言いますが、「上り」の列車は偶数が、「下り」の列車には奇数が用いられることになっています。従って、「あずさ2号」は本来ならば、松本から東京に行く列車のはずですが、この歌が作られた頃はそうなってはいなかったということでしょうか。

現在では、例えば、大阪から東京への新幹線は「のぞみ210号」「のぞみ280号」のように偶数で、東京から新大阪行きの新幹線は「のぞみ1号」「のぞみ3号」となるのです。

では、中国ではどうでしょうか?

例えば、揚州から北京への列車は「G2588(Gは“高铁”)」「Z30(Zは“直达火车”)」と偶数で、北京から揚州は「G1595」「Z29」のように奇数になっています。つまり日本と同じようです。

飛行機の場合も行きと帰りの便では数字を分けています

例えば、大阪から東京は「JAL102」「JAL104」のように偶数ですが、逆は「JAL101」「JAL103」と奇数になっています。

これは中国でも同じようですが、ただ、飛行機の場合は航空会社の本部(基地)がどこにあるかによっても違うようです。つまり、その基地から出発する便は奇数で、そこに到着する便は偶数になります。

例えば、厦門航空では、厦門を発つ便は奇数で、厦門に着く便は偶数です。

奇数と偶数ということで言えば、中国では、コンサートや映画館は大体指定席(“对号入座”)になりますが、この場合、指定席の取り方には注意が必要です。

日本ですと、隣り合わせの席の番号は続いています。例えば、D-1とD-2では、D列の1番と2番で隣になりますね。ところが中国では、奇数(“单号”)と偶数(“双号”)で席を大きく2つに分けているのです。真ん中に「1」があり、その左側に「3」「5」…と続き、「1」の右側に「2」「4」…と続きます

当然奇数の席の入り口と偶数の席の入り口は別になっています。恋人と映画館に行くときは、くれぐれも注意して下さい。「離ればなれ」にならないように。 これはホテルの部屋でも同じようなことがあって、廊下を隔てて右が偶数、左が奇数というように分けている場合もありますが、ただし、これは全てのホテルがそうというわけでもないようです。

 ところで、ヨーロッパの列車の座席番号はちょっと戸惑います

 向かい合って座る席も多いのですが、そのボックス毎で番号がふられるのです。なので、指定席を買っても、自分の席がどこなのか探すのに一苦労する場合もあります。

こうした数字や日常生活におけるそれぞれの文化の違いを考えてみることも、異文化理解という観点から大切なことです。そして、自国ファーストが蔓延する現代にこそ、こうしたものの見方が必要になってくるのだと私は思っています。

内田 慶市(うちだ けいいち)/1951 年福井県生まれ。博士(文学)・博士(文化交渉学)。専攻は中国語学、文化交渉学。福井大学教育学部助教授、関西大学文学部・外国語学部教授、大学院東アジア文化研究科教授を歴任。2021年関西大学外国語学部特別契約教授定年退職。東アジア文化交渉学会常任副会長( 2009 年~)、中国語教育学会理事( 2016年3月~2020年2月)、関西大学アジア・オープン・リサーチセンター長( 2017年4月~)、日本中国語検定協会理事長(2020年6月~)。主著に『近代における東西言語文化接触の研究』(関西大学出版部、2001)、『文化交渉学と言語接触─中国言語学における周縁からのアプローチ』(関西大学出版部、2010)、『漢訳イソップ集』(ユニウス、2014)などがある。

今回紹介したコラムは『聴く中国語』2026年4月号に掲載しております。

興味のある方ぜひこちらをチェックしてみてください。

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