全国通訳案内士への道~いかにこの不可解な試験沼にはまったか~

中国語学習

初めまして。最近まで全国通訳案内士(以下、通訳案内士とする)という国家資格の受験生だった五弦です。私は2010年代に中国で勤務していた、現在は日本在住の40代日本人女性です。こちらのコラムでは「通訳案內士」に興味を持ってもらい受験生がもっと増加するといいな、という思いを込め「通訳案內士」に関する様々なテーマで書かせていただきます。

 まだ受かってもないのに、よくこんなコラムが書けますね、という声も聞こえて来そうですが、なんせ1次試験合格までに足掛け6年という長い年月をかけ、初めての2次試験(口述試験)で潔く敗退という受験歴があります。学習内容の密度は置いておいて、時間だけはかけてきたのでいろいろお伝えできることもあるかと思います。
 

全国通訳案内士試験とは

 そもそも、「通訳案内士」という資格は通訳などに興味がある方以外はあまり聞き慣れない資格かもしれません。「通訳案內士」は以下のように定義されています。

全国通訳案内士は、通訳案内士法において「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を⽤いて、旅⾏に関する案内をすることをいう)を行うことを業とする」とされています。

全国通訳案内⼠は、単に語学⼒が優秀であるだけでなく、日本全国の歴史・地理・文化等に関する幅広い知識・教養を持って⽇本を紹介するという重要な役割を負っています。外国⼈旅⾏者に⽇本の良い印象を持って帰ってもらうことは、正しい⽇本理解の第⼀歩となり、”⺠間外交官”とも⾔える国際親善の⼀翼を担うやりがいのある仕事です

【出典】JNTOサイト

 

 HSKや中国語検定などのメジャーな中国語語学資格に比べて、圧倒的に知名度も低いし、受験者数も少ない試験です。とは言え、日本で唯一の語学系国家試験という理由で目指す人もいます。ちなみに、2023年度の受験者数は全国で以下のとおりです。

【出典】JNTO

 中国語の受験者数はなんと319人!これでも2番目に受験者の多い外国語ですが、それに比べて英語の受験者は中国語の約8倍。全体の約75%を占めています。ちなみに、HSKの受験者数は…

【出典】HSK日本実施委員会

2023年度の受験者数は32,477人と通訳案內士受験者の実に100倍!!

さんざん2次対策の問題集を探し当たり、あまりになかったため2社ほど出版社にかけあったこともありましたが、そりゃあ作りませんよね。普通に考えて商売にならないですもん

 

受験者が少ない理由

 ではなぜ中国語通訳案内士の受験者は少ないのでしょうか。私が考える理由は以下の3つです。

  1. そもそも資格の認知度が低い
  2. 1次試験がへんてこ過ぎる
  3. 無資格者と有資格者の区別がないなら、取る意味があるのか

 

 1について、私がこの試験を知ったのも中国滞在時に同僚から「HSK6級で1次試験の語学が免除になる通訳案內士という資格がある」と聞いたのがきっかけでした。この一言がなければ、何となく聞いたことのあっただけのこの資格に見向きもしなかっただろうし、1回目はほとんど勉強もせず何となくノリで試験を受け、受験沼に6年ハマることにもならなかったでしょう。

 

 2について、これは通訳案内士業界ではずっと言われていることのようですが「奇問・難問が多すぎる」ということです。1次試験では外国語以外に「日本地理・日本歴史・一般常識・通訳案内の実務」の4科目が課せられます。これら5科目に合格して初めて2次試験に進むことができるのですが、実務には必要ないだろう、というレベルのかなりマニアックな問題が出ることがあります。年度によって難易度と内容にもかなりバラつき・偏りがあり、「こうすれば受かる」といった対策をするのが難しい試験です。

 ただ、語学と同様、日本地理や日本歴史は旅行業務取扱管理者や日本歴史能力検定2級以上を取得していれば免除になる、といった措置もあります。いずれにせよ1次試験を突破するまでに数年かかる、なんて私の周囲でもザラでした。かぼすくんだかすだちくんだか、ゆるキャラを誤答して一般常識を落としたことは一生忘れないと思います。1次試験のへんてこ具合や対策についてはまた別の機会に書きます。


 そして3ですが、2018年度から通訳案內士法の改正に伴い、無資格者でも有償で通訳案內士の仕事ができるようになりました。もちろん無資格で資格名や類似名称を使うことは禁止されていますが、「難関試験なのに取得する意味があるのか」となるのは当然ですよね。しかし資格の有無でどちらがガイドとしての技能に信頼がおけるか、ということは明らかだと思います。このあたりは業界内でもいろいろな声が出ているようなので、その辺りも紹介できればと思います。

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