全国通訳案内士への道~いかにこの不可解な試験沼にはまったか~②

中国語学習

初めまして。最近まで全国通訳案内士(以下、通訳案内士とする)という国家資格に6年かけて挑んだ五弦(名前の由来はコラムの最終回で種明かしします)です。私は2010年代に中国で勤務していた、現在は日本在住の40代日本人女性です。こちらのコラムでは「通訳案內士」に興味を持ってもらい受験生がもっと増加するといいな、という思いを込め「通訳案內士」に関する様々なテーマで書かせていただきます。

通訳案内士を取得する意義とは

 
 今回は「通訳案内士を取得する意義」について考えてみたいと思います。語学学習者にとって資格を取得する目的は、力だめし、勉強のモチベーションの維持、通過点、もしくは公的に証明するため、といったところではないでしょうか。もし「中国語検定準1級が目的です」といったような方がいたらお目にかかりたいです。

 
 通訳案内士も同様で、取得だけが目的なら資格マニアかタンス資格になることでしょう。大人になるほど、せっかくお金と時間をかけて取得するのであれば、最初から資格を使うことを見込んで取り組みたいものです。
 

 資格は手段なのですが、通訳案内士を勉強していて思ったのが、これは語学を学習する目的に成り得るな、と。外国語を学ぶ、というのは相手の文化を理解することです。ただ、いくら相手の事を理解しようとしたところで、相互理解には自分たちのこともよく知っておく、というのが必要です。海外に出ると誰もが“日本代表”で「日本では…」と話し始めると耳を傾けてくれるわけです。

日本のことを知るのは楽しい

 
 ですから、日本の事象を外国語で説明できるようにする、自分たちを知ってもらうために外国語でガイドをできるようになるための学習は、語学学習の最終形態なのではないか、と気づいたのです。「相手のことを貪欲に吸収するばかりで、自分たちを知ろうとしていなかった」んです。日本人なのに日本について知らないことが多々あることに気づかされました。

 

例を挙げます。

◎日本地理…日本の国立公園、国定公園の違い。国宝・重要文化財の違い。河川、山、海、島、岬などで重要なものを一から叩き込む。地方の名物料理、伝統行事など。世界遺産はすべておさえる。

◎日本歴史…私は高校で世界史専攻だったため、中学歴史の知識からやり直し。高校の日本史レベルまでもっていくのにかなり時間がかかりました。

◎一般常識…日本の伝統芸能(歌舞伎、浄瑠璃、能、狂言など)の知識。日本食(日本酒、焼酎など)に関する知識。伝統文化(茶、俳句、華道など)に関する知識。そのほか相撲、武道などあらゆる日本のスポーツ。時事問題、社会問題など、日頃からニュースに触れておく必要がある。

 
 間違いなく断言できるのですが、これほどまで試験勉強が楽しかった資格は今にも後にもありません。勉強、というより趣味に近い感じでした。いったん通訳案内士受験生脳のスイッチが入ってしまえば、身の回りの日本事象すべてが試験ネタになります。もちろんそれだけでは対策としては不十分なので試験向けのテクニックや練習は必要でしたが。

 

身近なことすべてが試験ネタ

 
 分かりやすいのが旅行。地理・歴史は実際に足を運ぶこと自体が学習になります。自分で行く際は旅行ガイド2冊くらいを精読するのは当たり前。お城に行った時、誰も目に留めないような案内書きをじっと見てしまったり、ガイドさんのマニアックな案内に聞き入ったり。ご当地グルメを食べることだって勉強です。

 

 友人との会話も弾みます。「どこどこ行ったんだよね~」と言われると「あ、そこには近くに何々があって、あれがおいしいんでしょ」といった具合です。

 あとはNHKの大河ドラマ。歴史の流れと主要人物が分かっているので、ストーリーの入り方が全然違います。楽しむ余裕が生まれます。知らない人物が登場すると、だいたい詳細まで調べたくなります。

 
 私は地理の勉強にGoogle MAPを使っていたのですが、知らない地名が出るたびにデジタル地図上にフラグを立てて行きました。そして学習中に遭遇した行きたい場所には別のフラグを立てます。こうしてフラグで埋まっていくのを満足気に眺め「試験が終わったら遊びに行く」とモチベーションに変えるのです。


 アニメが好きな方は、聖地巡礼ですら学習に成り得ます。一般常識試験で「江ノ電の鎌倉高校前駅が聖地巡礼のスポットとなっているアニメは」という問題が出たことがあります。(答えは『スラムダンク』)


まとめ

 
 いわば、自動的に好奇心と知識欲を高めてくれる、それが通訳案内士の勉強です。勉強だと思わないで自然にやっていることが勉強になっているのです。こんなに楽しい勉強って他にあるでしょうか?

 もし1次試験対策が辛く苦しいものなら、長くは続かず途中で嫌になってあきらめていたと思います。2次試験(口述試験)は1次の知識がベースとなるので、1次試験の勉強が辛いと難しいのかもしれません。

 試験の結果がどうであれ、試験対策を通じて得た知識は一生ものだと思います。語学学習の深淵に触れる、日本の素晴らしさを再認識できる、胸を張って日本人と言える教養を身に付ける、公私問わず一生を通して使える知識が身に付く、という意味で私は通訳案内士に挑戦する意義があると思っています。

 ここまでで少しでも通訳案内士試験に興味を持っていただいた方、ありがとうございます。次からは実際の1次、2次試験の体験と対策の詳細について書きます。

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