中国語語学誌『聴く中国語』では猫と詩人をテーマに昔の漢詩をご紹介しています。
今回は声優で翻訳家である白伊先生が執筆された、「猫の狩猟本能」というコラムをご紹介します。
中国では黒目の大きい目を「铜铃大眼(銅の鈴のような大きい目)」と形容したりしますが、真ん丸な目を持つ身近な動物と言えば、猫を思い浮かべる人も多いでしょう。気になる玩具を見つけた時のクリンとしたお目々のなんと愛らしいことか!
けれどつぶらな瞳が可愛い猫も、目を細めたとたん凛々しくなったり、険しい顔つきになったりします。「目は心の窓」という言い方は実に的を射たもので、変わる瞳を持つ猫も多面的な魅力を持っていると言えましょう。
题画猫 tí huà māo / 明・张以宁
绣茵睡起饱溪鲜, xiù yīn shuì qǐ bǎo xī xiān ,
半卧闲庭日静前。 bàn wò xián tíng rì jìng qián 。
忆在牡丹花下见, yì zài mǔ dān huā xià jiàn ,
双睛一线午晴天。 shuāng jīng yī xiàn wǔ qíng tiān 。
【现代文】
猫儿从绣花被褥中慢吞吞爬起,新鲜河鱼吃到肚子饱饱的,在静悄悄的庭院里悠闲地晒起了太阳。
在牡丹花下找到它的身影,晴朗正午的阳光下,两眼眼瞳眯成了细线。
訳文:
猫は花の刺繍を施された寝床からのそりと起き、新鮮な川魚をたらふく食べては、閑かな庭でだらだらと日光浴に興じている。
牡丹の花の下にその姿を見つけた時は、正午の日差しで目が細い線になっていた。
これはにゃんの言葉?
「猫眼一天三变(猫の目は一日三回変わる)」とは猫の瞳の変化を指して言う俗説。朝は「枣核(ナツメの種)」のような楕円形で、昼は「细线(細い線)」の形を取り、夜は「铜铃(銅の鈴)」の形へと変わる。
絵画の中の猫と花(時々蝶々)
詩や絵画の中の猫は、高い確率で花や蝶々と一緒に登場する。放し飼いが一般的だった古代なら、猫が草花の中で戯れるのも頷けるが、絵画の場合は縁起のいいものとして描かれる場合が多い。
「猫māo」の発音が「耄mào」に近く、「蝶dié」の発音が「耋dié」と同じことから、猫と蝶々を「耄耋(老年、高齢の意味)」にかけて描き、長寿を言祝ぐ意味が込められる。
牡丹も、その華やかさから財産と地位の象徴とされ、縁起のいい絵の常連客として登場する。
だから猫と牡丹――時々蝶々――の絵は、地位と富を有し、何一つ不自由しない長寿を意味する縁起物である。
ちなみに猫の目が線になっているのは何も強い日差しだけが原因ではない。リラックスしている時も猫は目が線になる。そこまで汲み取って絵に描いた画家の観察眼は、見事としか言いようがない。
今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年11月号に掲載しております。
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