飛び込め北京~編集部員Tの北京生活13年~⑰“冬病夏治”って本当?中医の知恵『三伏貼』体験記

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中国の夏といえば「三伏 sān fú(さんぷく)」という特別な時期があります。
今回は、その三伏の期間にしか受けられない中医学の伝統療法「三伏贴 sān fú tiē(さんぷくてい)」を体験した記録をご紹介します。

三伏ってなに?

中国では、1年で最も暑い時期を「三伏」と呼び、次の3つの段階に分かれています。

これから暑くなる!初伏chū fú(しょふく)

三伏の始まり。梅雨が明けて本格的な暑さが始まる頃。

※2025年は7月20日(日)~29日(火)の10日間

暑さのピーク!中伏zhōng fú(ちゅうふく)

1年で最も暑く、湿気も多い時期。体調を崩しやすく注意が必要です。

※2025年は7月30日(水)~8月8日(金)の10日間

暑さが落ち着く末伏mò fú(まっぷく)

暑さが徐々に和らぎ、秋の気配が感じられ始める頃。

※2025年は8月9日(土)~18日(月)の10日間

この三伏の期間は、冷たい物をとりすぎないようにし、しっかり睡眠と栄養をとって体調を整えるべき時期とされています。

冬病夏治とは…?

「冬病夏治 dōng bìng xià zhì(とうびょうかち)」とは、「冬に悪化しやすい病を、夏のうちに治す」という中医学の理念です。

陽気(体のエネルギー)が最も盛んな三伏の時期に、体の中に溜まった寒気を外へ追い出すことで、冬に悪化する病気を予防・改善できると考えられています。

対象となる症状の例

  • 喘息、アレルギー性鼻炎
  • 関節痛、冷え性
  • 消化器系の虚弱
  • 生理痛や体のだるさ など

この理論に基づいた代表的な療法が、漢方薬をツボに貼る「三伏贴」です。私も2018年の夏、この治療を実際に体験してみました。

なぜ受けようと思ったか

当時の私は、まさに体調絶不調のどん底。
産後の疲れが出たのか、子どもが幼稚園に通い始めてから毎月のように風邪をもらい、免疫力は低下。帰省中には喘息を発症し、さらに重度の猫アレルギーも発覚。体のあちこちが痛み、しんどい日々を送っていました。

病院に通って薬をもらっても、どこかくすぶったような不調が続き、特に喘息は長期戦になりそうな予感。

そんな時、「これこそ本場・中国の中医学を体験するチャンスでは?」と思い立ちました(笑)。

私はもともと(おそらく普通の人より)中国医学に興味があり、日頃からマッサージ以外にもお灸や鍼などの施術も受けていました。また、情報誌の特集で取り上げることも多かったです。2018年頃は中医病院主催の中医&薬膳クラスにも通っており、三伏贴の存在を知ってすぐに施術している医院を調べ、大望路のローカル中医病院で受けることにしました。興味のあることなので行動が早いです(笑)。

「三伏貼」の施術の流れ

  1. 受付で「三伏贴を受けたい」と伝えると、問診票を渡されるので、記入します。
  2. 診察室で脈診問診。この病院では女医さんでした。脈を触っただけで「あなた月経少ないでしょ?」と言われてビックリ(当たり!)。軽くマッサージも施術されました。また、私の症状に効く漢方の配合を紹介されました。
  3. 漢方薬を丸めた1センチ弱の玉形の「お灸」を、診断されたツボに貼付されていきます。喘息治療のツボのほか、首もよくないとの診断で、首まわりのツボを中心に貼られました。
  4. そのまま6時間貼り続け、当日は飲酒と入浴は禁止とのこと。
丸めたお灸を潰して貼ります。なんだか子どものおままごとみたいな…

この施術を、初伏・中伏・末伏の三回に分けて受けました。支払った金額は控えていなかったので今となっては分かりませんが、確か数十元程度と、記憶にないほど安かったです。都度払いでした。

貼っている間に痛みや熱さを感じることはありませんでした。夏の盛りにお風呂に入れないのが不快なのも、回を重ねるごとに慣れていきました。
何しろ日本ではなかなか体験できない療法だったので、面白がって施術されていました。

施術に来ていたのは主婦や中年男性などさまざまで、子どもも施術可能とのことでした。

中医病院での漢方処方

先生の手書きの処方を見せて漢方を院内で購入。価格は控えていませんでしたがまあ安いです。
何かの紙の裏に無造作に書かれた漢方処方。クコの実10個とオウギ2片、菊花5,6個、干しナツメ1個を煮出して飲むように言われました。

三伏貼を貼り終わると、院内の漢方薬局で漢方を量り売りしてもらいました。

ローカル病院だったというのもあると思いますが、漢方の価格は低価格です。(外国人価格的なものもありませんでした。)この時処方されたのは以下のものでした。

  • 枸杞 gǒuqǐ(クコの実):ドライアイやアンチエイジング、美肌、免疫調整機能。
  • 黄芪 huángqí(オウギ):慢性疲労、風邪予防、免疫調整、高血圧対策。
  • 菊花 júhuā(菊花):目の充血、パソコン疲れ、眼精疲労、のぼせ、ストレス緩和。
  • 大枣 dàzǎo(干しナツメ):貧血予防、胃腸虚弱、精神不安、不眠、冷え性対策。

この組み合わせは、「補気養肝明目」と言い、疲れ目・軽い虚弱・ストレス・免疫力アップの効果があるそう。免疫力がおちていたので、ピッタリの処方です。

自宅にクコの実と干しナツメ、菊花はあったので、オウギだけを買いました。

これが漢方茶の材料です。早速煮出してみました。
甘くも苦くもない、スッキリとした飲み口。温かいまま飲むのが良いそうです。
我が家の漢方コーナー。この時期はハマって色々揃えていました。

漢方は、わざわざ中医病院の薬局に行かなくても、路面の薬局に売っていたり、スーパーにある食材も漢方スープに使えたりと、すごく身近な存在でした。私も家で酸梅湯や薬膳スープを作ったり、棒灸をしてみたら部屋中煙まみれになったことなど、思い出いっぱいですw

やってみた結果は?

衝撃の姿…。これではおしゃれできませんw。ですが、北京では気にせず薄着で過ごすツワモノが多め。見習おう。

果たして、三伏貼の効果はどうだったのか?

「その冬、元気になっていたか?」というと……実はあまり記憶がありません(笑)。ごめんなさい。
ただ、子どもが幼稚園生活に慣れたことで風邪を引く回数が減り、私自身も体調の良い日が増えました。喘息も悪化することなく、数年後には吸入器を卒業できました。

三伏貼は自宅でもできる!

各薬局から出ている三伏貼セット。この時期の中国土産にいかが?

ツボの位置さえわかれば、専用セットを店舗やネットで購入して自宅で行うことも可能です。
とはいえ、この三伏贴という「行事のような治療法」は、本場・中国で体験するのが一番印象深くて面白い!

日本ではほとんど知られていませんが、中国では子どもからお年寄りまで幅広く受けており、夏の風物詩のような存在の「三伏貼」。興味のある方は、ぜひ一度体験してみてください!

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