上海で体感した日本映画の人気

中国留学記
コラムニスト 水上華
日本と中国のハーフ。日本で生まれ育ち高校三年生の時に中国への留学を決め中国の大学に入学するも、新型コロナウイルスの影響で一年生の間は中国への渡航が叶わず日本でオンライン授業を受けた。

 最近、私は上海で開催された2つの日本映画イベントに参加した。作品は『孤独のグルメ』『ラブレター』。どちらもただの上映会ではなく、主演の松重豊さんや岩井俊二監督が実際に登壇される、トークイベント付きの特別上映だった。

 普段、中国の映画館にはよく足を運んでいるが、今回の2つのイベントはいずれも「満席」。中国の映画館でこれほど席が埋まっている光景はあまり見たことがなく、その熱気にまず驚かされた。やはり作品そのものだけでなく、「本人が来る」という特別感が、多くの人を惹きつけたのだと思う。

『孤独のグルメ』イベント

 『孤独のグルメ』のイベントには、友人に誘われて参加した。日本では定番のドラマだが、実は私はこれまでしっかり観たことがなかった。正直、中国でここまで人気があるとは思っておらず、会場の盛り上がりに驚かされた。スクリーンに五郎さんが登場すると、自然と笑いや拍手が起きる。とくに印象的だったのは、中国の観客のリアクションの大きさ。面白いシーンでは遠慮なく声を出して笑い、感情を素直に表現するその姿に、「ああ、こうやって中国の人は映画を楽しむんだな」と、日本との違いを肌で感じることができた。

 さらに強く印象に残っているのは、観客の中に一眼レフのような本格的なカメラを持っている人が何人もいたこと。「えっ、記者さんですか?」と思ってしまうような機材を構えている人もいて、それだけ松重豊さんが中国で高い人気を誇っているのだと実感した。イベント中は、彼の一言一言に耳を傾け、シャッターチャンスを逃すまいとする姿があちこちに見られた。中国のファンの熱量の高さを、まさに目の当たりにした気がした。

 上映後のトークでは、松重さんがドラマ制作の裏側やロケ地、細部へのこだわりについて語ってくださった。撮影現場の雰囲気や制作チームとの関係性など、普段は知ることのできない話を聞けて、作品への理解がぐっと深まった。そして何より、松重さんの登場を心から歓迎する中国の観客の姿が本当に印象的だった。日本のドラマや映画が、国を越えてこれほど愛されていることを、改めて実感した瞬間だった。

映画『ラブレター』上映会

 翌月には、映画『ラブレター』の上映会にも参加した。私のとっても大好きな作品で、冬の小樽の風景や淡く切ない物語には、何度観ても胸がぎゅっとなる。今回は岩井俊二監督ご本人が登壇され、制作当時の思いや裏話を丁寧に語ってくださった。

 とくに印象的だったのが、観客からの質問コーナー。ある若い中国人男性が、映画への思いをとても熱く、まっすぐな言葉で語っていて、私はそれを聞きながら「日本映画をこんなにも深く受け止めてくれる人がいるんだ」と胸が熱くなった。彼は彼女を連れてきており、映画のあとにはちょっとした“公开告白”のような場面もあり、会場がふわっと温かな空気に包まれたのも印象的だった。

 どちらのイベントも、ただ作品を楽しむだけではなく、「人と人」「国と国」がつながる瞬間を感じられる、貴重な体験だった。俳優や監督だけでなく、それを観に来る観客、映画を届けるスタッフ、そしてそれを受け取る自分。文化や言葉の違いを越えて、同じ作品を通して「好き」という気持ちでつながることができる映画って、本当に素晴らしいものだと改めて感じた。

 最後には、どちらのイベントでも集合写真の時間があり、私もちゃっかり写って記念になった。もともと映画が好きな私にとって、現地で日本の作品に触れ、さらに出演者や監督の話まで聞ける機会は本当に貴重で、心から嬉しかった。きっとこの思い出は、ずっと大切な記憶として残っていくと思う。くうちに、「これは映画でもっと深く感じてみたい」と思うようになった。

本コラムは『聴く中国語』2025年8月号に掲載しております。

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