中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習にまつわるお話をご紹介しています。
今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、「シャドーイング！（2）」というテーマのコラムをご紹介します。
執筆者：七海和子先生
日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。
皆さん、こんにちは。七海和子です。
さあ、2025年の幕開けです！「一年の計は元旦にあり」と言いますね。皆さんは今年の中国語学習計画、または中国語を使ってやりたいことの計画は立てましたか？今年も皆さんと楽しく中国語を学んでいきたいと思います！
さて、前回はシャドーイングをどのように行うのか、その方法について述べました。重要なので繰り返しますが、シャドーイングをする際に選ぶ音声は「100％理解できるもの」から始めましょう。理解できるからと言ってなめてかかってはいけませんよ。これを「お手本の音声と同じように口に出す」のはそんなに簡単なことではありません。
適切な音声を見つけたら、とにかくシャドーイングをします。シャドーイングは立ったままでも、寝ながらでもできるので、本当に身近にできる訓練方法なんです。でも、場合によっては声を出しにくい場合もありますよね。例えば電車に乗っているとき。そんな時はマスクをして声を出さずにシャドーイングをしてみましょう。声は出さなくても、しっかりと音を聴き、口の形、舌の位置などを意識して口を動かしてください。これでも十分効果があります。通勤時間など、ある程度の時間まとまって交通機関を利用する時間はシャドーイング天国です。
シャドーイングをするときは、そのとおりに声を出さなければ（口を動かさなければ）ならないので、音を聞き漏らさないように集中して聴くようなります。聞き漏らしたらそのとおりに真似できませんからね。最初に「100％理解できる」音声を選ぶことが重要と書きましたが、「理解できる」と、それを「同じように発声する」のは別物で、最初のうちは、いくつかの音を落としていることに気づくと思います。特に日本人にとっては使い方が難しい“就”や“才”などの副詞、“了”や補語などは音を落としたり、うまく言えなかったりすることが多いかもしれません。
前回、シャドーイングを始める前に、音声をよく聞いて内容を把握し、その後スクリプトを見て、自分の理解が正しいかどうか確認する作業をするようにと書きました。その際に単語や文法が理解できているかも併せて確認するようにとも述べました。文法はルールなので、それを覚えることは重要です。但し、頭で理解できても、それを使えるようになるのは、なかなか大変です。文法を理解したうえで、シャドーイングを繰り返すことで、その使い方を体で覚えることができるようになっていきます。体で覚えると、会話など自分自身で発言するとき（音声のお手本などがないとき）に、「こういう場合は、こんな言い方をするのが正しい気がする」という感覚が鋭くなるのです。この感覚が養われると、「今こんな流れで話が進んでいるから、次に来るのはこの単語かな？」という予測がつくようになります。そうなると、ヒアリング能力も飛躍的に向上します。今まで聴きとれなかった映画やドラマのセリフもひとつひとつの音がクリアに聞こえるようになっていくはずです。
シャドーイングの音声はひっきりなしに変えるのではなく、じっくり取り組むことも大切です。「完コピ」を目指すくらいの意気込みで取り組みましょう。とは言え、そんなに根をつめなくてもいいんです。「継続」するためには、気楽に楽しくやることが大切。ひとつの音声にじっくり取り組むことで、慣れてくると「ながらシャドーイング」ができるようになります。そうなると、家事をしながら、湯船につかりながらでもシャドーイングができるようになります。「ながら」でできるなんて気楽でしょ？でも、「ながら」でできるということは、かなりその音声が体に染み込んできたということで、その音声に使われている単語や文法を体が覚え始めた、ということなんですよ！
シャドーイングは、お手本の音声さえあれば、いつでもどこでもできる練習方法です。車に気をつければ、歩きながらだってできちゃいます。とにかく大切なのは、「お手本の音声をそのまま真似ること」これだけです。発音、声調、中国語らしい抑揚、すべてをそのまま真似て発声するようにしてください。最初のうちは、口が疲れると思います。それが正解！日本語と中国語では、使う口の筋肉が違うのです。これを繰り返すことで「中国語口」になり、つっかえつっかえではなく、なめらかに中国語を口にすることができるようになります。定期的に録音して自分の中国語をチェックすることも忘れないようにしてくださいね。
効果抜群、よいことばかりのシャドーイング、皆さんも気楽に始めてみてください！
今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年1月号に掲載しております。
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