ディクテーション!

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習にまつわるお話をご紹介しています。

今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、ディクテーション!というテーマのコラムをご紹介します。

執筆者:七海和子先生

日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。

 皆さん、こんにちは。七海和子です。

シャドーイングに続いて、今回はディクテーションのお話です。ディクテーションとは「書き取り」のことで、中国語では“听写”と言います。中国語のほうがわかりやすいですね。読んで字の如く「耳で聴いて書き取る」勉強法です。とても効果があるのですが、とっても時間がかかるし、体力も根性もいるし、それにディクテーションは「書く」という作業を伴うので、机に向かわないとできません。というわけで、挫折してしまう方が多いのも、このディクテーションです。

 今回は、そのディクテーションの方法について述べていきましょう。もしかしたら、ここに続けられるヒントがあるかもしれませんよ。

1.ディクテーションをする音声(スクリプトがついているもの)を選ぶ

 これもシャドーイングの時と同じで「難しいものを選ばない」が大前提です。シャドーイングの時は「自分が100%理解できる」ものが望ましいと言いましたが、ディクテーションでは、70%~80%くらい聴き取れるものを選んでもよいでしょう。が、先ほども言いましたが、とにかくディクテーションは時間がかかるんです!なので、音声自体は短いものにしましょう。慣れていない人は『聴く中国語』の「日本で中国語を使いこなそう(热情好客中国语)」、慣れている人や中国語レベルがある程度に達している人は「NEWS FOCUS(新闻聚焦)」の中の興味ある音声に挑戦してみるのもよいですね。後で答え合わせをするので、スクリプトがついていることは必須です。

2.まずは精読&音読

 おそらく多くの人が「よし!听写だ!」と意気込んで、いきなり始めてしまうと思うのですが、まずは精読しましょう。意味や文法は理解できていますか?わからない単語はありませんか?最低でも5回はじっくり読みましょう。内容がしっかり理解できたら、音読しましょう。音読する際も、中国語のリズム、区切るところなどを意識して、これも最低5回は音読してください。

3.さあ!ディクテーションです

 ここまで読んで、「精読も音読もやった!ディクテーションなんて楽勝じゃん!」と思ったあなた。ふふん、ディクテーションはそんなに簡単ではないのですよ。だから挫折する人が多いんです。さて、ここで大切なのは、できれば1センテンス、もし1センテンスが長ければ、意味の区切り、つまり読点のあるところで切って、その部分をディクテーションするということです。一単語、一単語で区切って書き取ることは、絶対にしないでください!なぜなら、これをやってしまうと、「よーし!全部書き取れた!ん?でも、なんて言ってたんだっけ?」ということになるからです。これではディクテーションの意味がありません。1センテンス聴いて、意味がわかっていても、漢字が思い出せなかったり、書き間違って直しているうちに、頭の中にあった音声が吹っ飛んでしまうこともあると思います。そんなときはピンイン(これが一番望ましい)でも、ひらがなでもいいので、まずは聴いた音を書き取ることに集中しましょう(「tingxie」、「ting1xie3」、「てぃんしえ」など)。この時、ピンイン、もしくはひらがな等で書いた部分の後ろにスペースを残しておいてくださいね。

 精読したのに、音読したのに、最初は全然できなくてがっかりするかもしれません。でも、諦めないで!気を取り直してもう一度最初からやりましょう!2回目以降は、ピンイン(もしくはひらがななど)の部分を埋めるような形でディクテーションをしてください。とは言え、できた部分を流し聞きするのではなく、書いたものを見ながら、集中して聞いてくださいね。できたと思っている部分でも、介詞など落としているかもしれませんよ。そんなときは、書き足してください。この作業をできるまで繰り返します(なので、短い音声がよいのです。長いと途中でイヤになってしまいますからね)。とはいえ、5回くらいまでにしておきましょう。これ以上やると、疲れるし、飽きてくるし、楽しくなくなってくるからです。「くやしい!もうちょっとやりたい!」くらいで切り上げるのも、続けるコツですよ。

4.答え合わせ

 ディクテーションしたものをスクリプトと照らし合わせて答え合わせです。この時、聴き取れなかったところ、間違ったところ、漏らしたところは赤で書いてください。そしてこの部分がなぜできなかったか、分析しましょう。こういうところに皆さんの隠れた弱点が表れてくるので、後にそこを重点的に復習すると効果的です。

 以上がディクテーションの方法です。ディクテーションにはいろいろな方法があるのですが、最初はいきなり始めるのではなく、きちんと意味を理解してから始めるほうが絶対に効果があがります。

 次回は、このディクテーションがもっと楽しくなるコツや、応用した勉強法を紹介したいと思います。それでは、また次号でお会いしましょう!


今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年2月号に掲載しております。

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