うっちーの中国語四方山話㉒「柿柿如意」から「昆布」まで——日中の“縁起もの”文化

中国語学習

中国語語学誌『聴く中国語』では日中異文化理解をテーマにしたコラムを連載しています。

今回は日本中国語検定協会理事長の内田慶市先生が執筆されたコラム、うっちーの中国語四方山話−異文化理解の観点から㉒「柿柿如意」から「昆布」まで——日中の“縁起もの”文化をご紹介します。

 年賀状には「謹賀新年」ということばと共に、よく縁起のいい絵が添えられますね。

 日本の作家である武者小路実篤の作品には「柿」の絵が多いことは皆さんもご存知でしょうが、中国でも「柿」は縁起のいい果物として年画などによく描かれます。“柿”は「事」と同じ発音なので、“柿柿如意”=“事事如意”、つまり「全てが順調でありますように」という意味になるのです。

 中国でこうした縁起のいい果物には、「柿」のほかにもいくつかあります。

 まず、“苹果(リンゴ)”です。これは“苹果”“苹píng”“平安”“平píng”と同音であるからです。

 “橘子(ミカン)も縁起物です。“橘子”“橘jú”の発音が“吉jí”と似ているからで、同じ柑橘類のオレンジも、中国語では“橙(子)chéng(zi)”と言って、発音が“成功”“成chéng”と同音なので好まれます。

 ところで、最近はあまり食べないかもしれませんが、“石榴(ザクロ)という果物はもともと中国固有の果物ではなく、昔にシルクロードを通して「西域」から入ってきたものです。

 西晋(265-316年)の『博物誌』という本には、

张骞使西域,得安石国榴种以,故名安石榴(張騫が西域に派遣された時に、安石国の榴の種を持ち帰ったので、安石榴と呼ばれる)

とあります。安石国というのは古代イラクの王国ですが、「安石国の榴」から「石榴」となったものです。日本語のザクロは、「石榴」の呉音読み(ジャク・ル)ですね。

 ザクロには実が沢山あり、そのことから「子孫繁栄」や「豊穣」のシンボルとされます。つまり“多子多福”ということですね。

また、“六六大(物事が全て順調に運ぶこと)という成語がありますが、この“六”“榴”として“榴榴大とした年画なども見られます。

 日本でも、これと同じような意味を持つ食べ物があります。例えば、「昆布(よろこぶ)」、「黒豆(まめにはたらけるように)」、「鯛(めでたい)」などは音が似ているため縁起が良いとされています。

 また、「くわい」は芽が空に向かって伸びることから立身出世の願いを込め、「れんこん」は穴が空いていて「見通しのよい将来」を、「数の子」はザクロと同じように「子だくさん、子孫繁栄」を表すとされ、それぞれ縁起のいい食べ物として正月のおせちに入っていますね。

 なお、中国のお正月(に限らず)によく家に貼られている定番の飾りは、逆さの福 (“倒福”= “到福”=福がやって来る)「五つの蝙蝠(こうもり=)」子どもが魚を抱えた絵(=“余”年年有余などがあります。

 以上は縁起の良いものですが、その逆もあります

 例えば、「梨」を恋人同士で切って食べるのは良くありません。「梨を切り分ける」のは“分梨”で、それは“分离(別れ)”につながるからです。

 また、プレゼントとして「傘」「置き時計」を贈るのも良くありません。それぞれ、“伞=散”“钟=终=临终”と音が通じるためです。

 さて、次の文章を読んでみてください。そして、なぜみんなが大笑いしたのかも考えてみましょう。問題は“吃醋”という言葉にあります。例えば、

以前,我在朋友家吃寿面。我吃面有个习惯,喜在里面放点儿醋。我打开醋瓶子,没好意思先往自己的碗里倒,先老太太:“您吃醋?”老太太把一沉:“我么大数了,吃什么醋!”得一家人哈哈大笑,把我都笑蒙了。

内田 慶市(うちだ けいいち)/1951 年福井県生まれ。博士(文学)・博士(文化交渉学)。専攻は中国語学、文化交渉学。福井大学教育学部助教授、関西大学文学部・外国語学部教授、大学院東アジア文化研究科教授を歴任。2021年関西大学外国語学部特別契約教授定年退職。東アジア文化交渉学会常任副会長( 2009 年~)、中国語教育学会理事( 2016年3月~2020年2月)、関西大学アジア・オープン・リサーチセンター長( 2017年4月~)、日本中国語検定協会理事長(2020年6月~)。主著に『近代における東西言語文化接触の研究』(関西大学出版部、2001)、『文化交渉学と言語接触─中国言語学における周縁からのアプローチ』(関西大学出版部、2010)、『漢訳イソップ集』(ユニウス、2014)などがある。

今回紹介したコラムは『聴く中国語』2026年1月号に掲載しております。

コメント

タイトルとURLをコピーしました