中国語語学誌『聴く中国語』では猫と詩人をテーマに昔の漢詩をご紹介しています。
今回は声優で翻訳家である白伊先生が執筆された、「猫はよく寝る子?」というコラムをご紹介します。
日本では、「猫(ねこ)」は「寝る子」が語源と言われるほどお寝坊さんのイメージがあるように、中国でもサボリ癖のある人を「懒猫 lǎn māo(だらける猫)」に例えたりします。
昼下がりの日向にごろんと寝転がる猫。呼吸に伴うお腹の微かな起伏を見ているだけで、人は幸せな気分にさせられるのです……
猫はダラダラしているだけでも可愛い!そう感じているのは現代人だけではないようです。
猫はよく寝る子?题睡猫图/元・柳贯
花阴闲卧小于菟, huā yīn xián wò xiǎo yú tù
堂上氍毹锦绣铺。 táng shàng qú shū jǐn xiù pù
放下珠帘春不管, fàng xià zhū lián chūn bù guǎn
隔笼鹦鹉唤狸奴。 gé lóng yīng wǔ huàn lí nú
【现代文】
那只小老虎悠闲地躺在花阴之下,对铺在屋子里的奢华毛毯置之不理。
春色被放下的珠帘隔离在外,鹦鹉隔着笼子冲着猫叫。
小さなトラちゃんはのんびりと花の陰に寝転がり、
部屋の中に敷かれたゴージャスな毛織のカーペットには見向きもしない。
御簾を下ろせば春まで隔てられ、鳥かごの中のインコは鳴き声で猫にちょっかいを出している。
詩と絵が融合したらどうなるにゃん?
题画诗 tí huà shī
中国画の余白に、絵の作者またはほかの詩人が書き込んだ詩。詩は絵の解説や作画の経緯、作詩者の感想など多岐に渡る。世界美術史においても、絵・詩・書道が融合した芸術の形は独特と言えるだろう。
詩と絵画――異なる形と相通じる心
何かに触発されて筆を取り、心に響いたものを形にする。その形は文字であったり、図形であったり、音符であったりするが、忘れ難い何かを形のある物として残し、誰かに伝えようとする気持ちは共通していると言えるだろう。
宋の時代はそれまでのどの王朝よりも「题画诗」が多く、絵と詩が響き合い、高め合い、創作者らを更なる高みへと引き上げた。「题画诗」に留まらず、絵を見た情景や感想を書き留めた詩作も多い。
もしや、戯れる猫の姿があまりにも可愛いから、書かずにはいられなかったのかも……?
さすが猫様、創作欲の源である!
今回紹介した白伊先生のコラムは『聴く中国語』2024年6月号に掲載しております。

コメント