中国語語学誌『聴く中国語』は毎月、日本で活躍している中国の有名人や日中友好に貢献している日本人にインタビューをしています。
今回は中国舞踊芸術家の区爱玲さんにインタビューしました。華僑三世で、横浜中華街で楊貴妃舞踊教室を開き、様々な伝統的祭日には中国・日本の人々に踊りを届けていらっしゃる区さんの芸術人生について伺ってみましょう。
――インタビューできることをとても嬉しく思います。区さんは傑出した中国舞踊芸術家でいらっしゃいますね。幼い頃どのように舞踊の道を歩み始めたのでしょうか?
私は幼い頃から踊るのが好きでした。小学校3、4年生の頃に、中華街の国慶節のイベントで、群舞「孔雀舞」を鑑賞し、それから中国舞踊が好きになりました。幸運なことに、私は当時横浜山手中華学校に通っていましたが、学校が中国舞踊の先生を招待し、その先生が中国伝統舞踊の授業をしてくださったのです。その時から私は中国舞踊を学び始め、今日に至ります。

――いつから日本で生活されているのですか?
私は日本で生まれました。華僑三世です。

――どのような言語環境で大きくなられたのでしょうか?
私の祖父母は中国広東省の出身で、私の両親は日本で生まれました。両親の会話は日本語で、祖母は時々広東語を話します。(聞いて分かりますか?)(広東語で)少し。聞くことはできますが、話すことはできません。(少し分かるんですね。)山手中華学校を卒業後、私は関東国際高等学校の中国語専攻で学び、その後日本女子体育短期大学に進学しました。(それからずっと舞踊のお仕事に携わられているのですか?)そうです。

――どのようなきっかけで北京舞踊学院(略称:北舞)に進学されたのですか?
短期大学卒業後、ある先生の紹介で北京舞踊学院に入りました。(北京舞踊学院ではどのくらいの期間学ばれたのですか?)1年間学びました。そこで新疆芸術学院の先生と出会い、この先生を通じて、私は(日本に)戻った後、新疆芸術学院に行き、ウイグル舞踊やタジク族の舞踊などの民族舞踊を学びました。

――どのような舞踊を踊ることができますか?
北京舞踊学院ではモンゴル族、朝鮮族、チベット族、ウイグル族、ミャオ族、ダイ族などの舞踊を学びました。(すべて少数民族の舞踊ですか?)他にも東北秧歌や安徽省の花鼓灯、雲南花灯、胶州秧歌などの民間舞踊も学びました。

――一番お好きなのはどの舞踊ですか?
どれも好きですが、一番好きなのはウイグル舞踊でしょうか。そのリズムを聴くと心引き付けられ、民族の情緒を感じられます。当時、私は内モンゴルや新疆、雲南に良き、実際に彼らの生活の中の舞踊を体験しました。
ゴールデンウィークは内モンゴルへ、国慶節は新疆へ、春節はハルビンへ行き、民間の民族舞踊を体験しました。それから雲南へ行き、シーサンパンナのタイ族舞踊を体験しました。
当時、私は「小卜少」というタイ族の舞踊を学びました。タイ族の帽子を探して、シーサンパンナへ行きました。行きは北京から雲南省の昆明まで普通座席で、帰りは「無座」でした。初めて「無座」を体験しました。(本当に座らなかったのですか?)しだいに空席ができ(座ることができ)ました。
それから現地の方々の生活の舞踊を体験しました。5月に北京舞踊学院でモンゴル舞踊を学んだ際は、まだ民族舞踊の雰囲気を(踊りで)表現することができませんでしたが、ゴールデンウィークに(内モンゴルへ行き)帰ってくると、先生から「民族の雰囲気が出てきたね。上達したね。」と褒められました。同級生も私の踊りを上手だと言ってくれました。(実際にその地域へ足を運んで学ぶことが大切ですね。)そうです。

――留学期間、困難や言葉の壁などにぶつかったことはありますか?何か忘れがたい出来事はありますか?
言葉の壁はありませんでした。関東国際高校に進学後も中国語を学び続けましたから。また、私の専攻は舞踊でしたので、先生も特に言語面を気にしていませんでした。(困難なことも特にありませんでしたか?)クラスメイトはみな踊るのが上手でしたから、私も一生懸命学び、皆についていかなければなりませんでした。(少しプレッシャーがありましたか?)ありましたね。

――では中国伝統舞踊の最大の魅力は何だと思いますか?
中国伝統舞踊の最大の魅力は、舞踊を通して、中国の広大な土地や果てしなく広がる草原、独特な芸術の風格や様々な文化習慣、さらに中国の歴史を知ることができることです。中国の文化や歴史を知る旅行のような感覚です。

――区さんがよく踊る演目を1、2つ紹介していただけますか?
この間、横浜中華街の春節のイベントで踊ったのは、「アルトゥシュ」というウイグル族の舞踊です。(これは区さんの代表的な作品でしょうか?)そうです。私は新疆芸術学院に行って先生から教わり、そして(今は)私が学生たちに教えています。

――楊貴妃中国舞踊教室についてご紹介いただけますか?
私は横浜中華街の楊貴妃中国舞踊教室で20年以上、華僑の子供たちや日本人に中国舞踊を教えてきました。毎年、中華街の春節プログラムの祝賀パレードや元宵節のパーティーで中国舞踊を披露し、1年のうちに他にもさまざまな舞台があります。
――いま学生は何人くらいいらっしゃいますか?
15人います。(大変ですね。レッスンだけでなく、舞台の準備もしなければなりません。)そうですね。(今年はいくつ舞台がありますか?)2、3つでしょうか。すでに確定しているものです。商科大学まちなかキャンパスでの舞台や、私の同級生が行う舞台があり、私たちも学生を連れて参加します。去年は山下公園の春節や中秋節のイベントにも出演しました。(伝統的な祭日には何らかの舞台があるのですね。)そうです。(新型コロナ期間は影響を受けましたか?)新型コロナ期間、やはり影響がありました。中華街もイベントがなくなりました。当時、私たちはZoomで舞踊を習い、ずっと続けてきました。今は(状況が)だいぶ良くなりました。

――中国伝統舞踊の今後の発展について、何かお考えはありますか?
将来的には、私が習い、踊ったことのある舞踊をもう一度まとめて、1つの舞台をつくりたいと思っています。学生たちが私の教えた中国舞踊を引き継いでいってくれたら嬉しいですね。また、現代だから表現できる舞踊も作ってみたいです。例えば、トン族の「長髪妹」の物語で民族舞踊劇を作ってみたいです。(ミュージカルですか?)舞踊劇です。物語を読みながら、ダンスをするのです。(楽しみです。)
来年の元宵節では灯花を使って演出する舞踊をつくりたいと思っています。蓮の花のライトを持って、一人一人の願いを月に届けるような舞踊です。伝統は大切で、受け継いでいく必要がありますが、同時に現代の新しいものも加え、自分のオリジナルの舞踊も作り出したいと思っています。

――今日着ていらっしゃるのはどの民族の衣装ですか?
これは中国古代舞踊の衣装で、漢代舞踊のものです。
――どのように舞踊を鑑賞すればよいか分からない方もいらっしゃるかもしれません。何かアドバイスはありますか?
まずは舞踊そのものの美しさを鑑賞すれば良いと思います。それから、演者の表情など、感覚的な部分がもっとも大切です。
――学生が舞台に上がれるようになるまで、指導にどのくらいの時間が必要ですか?
少なくとも1年学ばなければなりません。(年齢はいくつでも大丈夫ですか?)大丈夫です。(中高年でも大丈夫ですか?)はい。一生懸命努力し、感情を表現することができれば大丈夫です。

――長年舞踊に携わられており感慨深いものがあると思います。舞踊を学ぶことはどのような意義がありますか?
とにかく楽しいです。舞踊をすると楽しい気持ちになります。
――在日華僑として中国伝統舞踊を教え、伝統文化を伝えることは、どのような意義がありますか?
私は日本に生まれた華僑として、中日友好の架け橋になりたいと思っています。これは私の使命だと感じています。このような経験ができたことを幸運に思い、とても満足しています。

――最後に読者の皆さんに言語学習のアドバイスをいただけますか?
日本語と中国語は発音や声調が少し異なります。日本語の声調は起伏が少ないですが、中国語(の声調)には高低があります。ですので、中国語を話すときは歌を歌うように話すことをおすすめしたいです。音の高低があるため、美しいのです。恥ずかしがってはいけません。
――ありがとうございました!
ありがとうございました。

区爱玲
横浜生まれ。
日本女子体育短期大学舞踊学専攻卒業。
卒業後、中国舞踊の登竜門北京舞蹈学院へ留学。
在学中に中国民間、民族、古典舞踊を学ぶ。
卒業帰国後も度々北京や新疆ウィグル等中国東西南北各地へ渡り、56民族の暮らしに生きる舞踊を肌で感じ歴史ある優美な舞踊に魅了され、中国伝統舞踊を伝えたいという思いで中国舞踊スタジオを開設。
現在、楊貴妃中国舞踊スタジオ主宰。
神奈川芸術劇場NHK横浜放送局落成式、横浜開港祭祝賀イベント、横浜中華街春節祭、数々の舞踊イベントにて中国舞踊を披露している。
今回のインタビュー内容は月刊中国語学習誌『聴く中国語』2024年7月号に掲載されています。さらに詳しくチェックしてみたい方は、ぜひ『聴く中国語』2024年7月号をご覧ください。

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