中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習にまつわるお話をご紹介しています。
今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、「“听写”! (応用編) 」というテーマのコラムをご紹介します。
執筆者:七海和子先生
日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。

皆さん、こんにちは。七海和子です。
“听写”(ディクテーション)の方法についてお話しした前回に続き、今回は“听写”が楽しくなる工夫や、“听写”を応用した勉強方法について書きたいと思います。
前回も書きましたが、“听写”は効果はあるのですが、時間がかかるし、体力も根性もいるし、何より机に向かわないとできません。ハードルが高めです。しかも、月1回とかではあまり効果が見込めず(でも、やらないよりマシです!)、挑戦するなら、一定の期間継続して行うほうがよいのです。こんなことを書いてしまうと、ますますハードルが高いと思われてしまいますね。でも、本当に効果があるので、是非皆さんにおすすめしたい勉強法なのです。では、どのようにしたら継続できるかを考えてみましょう!
まずは机に向かう
これがねぇ、なかなか難しいんですよ。「三度の飯より中国語が好きっ!」という方には、無縁の悩みかもしれませんが、私を含め多くの人は、まず机に向かうという第一関門を突破しないといけないのではないでしょうか。学校や仕事があると、「毎日同じ時間に」というのは難しいでしょう。ですので、「お風呂に入る前(入った後)の30分」とか「寝る前の30分」など、習慣となっていることの前後に机に向かう時間を設定するのがやりやすいと思います。
気に入った筆記用具を使う
これ、小さなことだと思いますよね。いえいえ、筆記用具、結構大事です。グリップの感触や太さとか、インクの滑り具合とか、「これ!」というものがあればとても快適に“听写”ができるんです。それにお気に入りの筆記用具があると気分が上がりますよ!
数日できなくでもOK!でも必ず継続&結果を可視化する
日々忙しい私たち。思わぬ残業、急に入ったスケジュール、などなど、どうしてもできない日だって出てくるはず。やる気まんまんで“听写”をすると決めても、そんな日が1日2日続くと、なんだか気が抜けてしまって、今日はできるはずなのに、「ま、いいかな」と思ってそのままなし崩し的に自然消滅してしまう…、そんなこと、ありませんか?これを回避するのにおすすめの方法が。目につくところに透明な瓶(中が見えて小さ目ということが重要!ジャムの瓶などがピッタリです)を置いて、“听写”が終わるごとに、一つ何かを入れるのです。ちなみに、私が入れるのは10円玉か100円玉。例えば、「今月は“听写”月間!1ヵ月続けよう!」と決めたら、“听写”を1回やるごとに瓶に10円を入れます。1ヵ月の間には、怠け心が起きる日もあるでしょう。そのときにこの瓶を見ると、「うーん、せっかくやるって決めたのに、ここで止めるのは惜しいかも」という気持ちが起きて、しぶしぶでも机に向かうことになるのです。机に向かえばこっちのもの。やり出せば、気分も乗ってくるものです。今までの結果が量としてわかるものがあると、自分を奮い立たせやすいのです。そして、入れるものがお金だと、目標達成のあとに自分にご褒美をあげられるという特典もあります(笑)。私の「ご褒美」はおおむねアイスです。
“听写”の応用:自分の中国語を可視化する
これは、続けるための工夫ではなく、“听写”自体の応用です。どちらかというと中級から上級者向けの方法かと思います。日本語を見て、それを中国語に訳す、または絵などを見て、その状況を中国語で説明し、その声を録音します。それを再生し、「ん?何かちょっとおかしい」と思うところ・違和感のあるところを“听写”します。
ちょっと変な感じがするでしょうが、自分の言ったことが文字となって現れるというのは、本来音として消えてしまうものを視覚で確認できるので、客観的に自分の中国語を「見る」ことができます。文字となることで、どこが正しく言えなかったのか、なぜ言えなかったのかがわかり、自分の間違いやすい傾向も把握することができるのです。違和感がある部分は中国語の構成ができていない、適切な表現ができていない可能性が高いので、その書き出した自分の中国語をじっくりと見て、どこがおかしいのかを分析します。文法的に間違っていたら、文法書を見て復習し、正しい言い方に修正しましょう。
自分の声を聴く、しかも流暢に言えていない部分を聴く、それを“听写”するって、最初は拷問のように感じるでしょう。でも、じきに慣れますよ(笑)。
“听写”したものを分析し、「次回はこの失敗は繰り返さないぞ!」と思っても、次も同じようなことを繰り返すと思います。でも、それを視覚によって再度確認し、間違いをしっかりと認識することで徐々に改善されていきますから、ご安心を!むしろ「またやっちゃった~!」と間違いを楽しむくらいの大きな心でチャレンジしてください。
皆さんが気軽に“听写”を楽しんでくれますように!
今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2025年3月号に掲載しております。

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