中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習にまつわるお話をご紹介しています。
今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、「とっさのひとこと(これが一番難しい!)」というテーマのコラムをご紹介します。
執筆者:七海和子先生
日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。

皆さん、こんにちは。七海和子です。
先日帰省して、一緒に帰った愛犬と散歩をしている時に突然、
「このバスはSea Candleに行きますか?」と、聞かれました。ええ、英語で…(泣)。
私「このバスはSea Candleには行きませんよ。そこなら歩いて行けます。徒歩で15分くらいですが、大丈夫ですか?」
相手「ええ、大丈夫です。」
(うまく言えないので手招きしながら)
私「ちょっとこっちへ来てください。この道をずーっとまっすぐ行って、橋を渡ります。そのあと歩きに歩けばSea Candleに着きますよ。」
相手「ありがとう。」
…という会話を英語で繰り広げました。

こう書くとずいぶん流暢に話したみたいですが、実際はしどろもどろ…。そもそも「歩きに歩けばSea Candleに着く」なんて道案内は不親切極まりなしです。とは言え、直後の私は「やり切った感」に満ち溢れていました(笑)。
しばらくたってから、「えー、ああ言えばよかったのに」とか「あの表現知ってたのにぃ!」などと自己嫌悪に陥りました。そしてふと漏れた独り言。
「中国語だったら、もっとマシな案内ができたのにな」。
ん?中国語だったら、なぜもっとマシな説明ができるのでしょう。私にとって英語も中国語も同じように外国語なのに。

まず、大きな要因のひとつに、私にとって英語と中国語では、触れている時間が「大幅に違う」ことが挙げられます。仕事柄当然なのですが、中国語は毎日読み、声に出し、そして書いています。それに対して、英語はほんのたまにしか読んでいません。声に出すとなると、なおさら頻度は下がります。書くなんて言ったら、先ほど書いた「Sea Candle」が久しぶりに書いた英語です。一応、学校で習いはしたので、基本的なことはまだ完全には忘れていません(私の英語レベルはその程度…)。ですから、上記の道案内も考える時間が十分にあれば、もっとマシなことが言えた可能性はあります。しかし、コミュニケーションには迅速な反応が必要なので、いくら完璧に答えられたとしても、聞かれてから30分も経っていたら意味がないのです。語学って「(単語や文法を)知っている」だけではだめなのですね。

きっと皆さんはこんな当たり前のことはご存知だと思います。しかし、とっさに話さなければならない場面になると、焦るし、覚えていたことは忘れるし、瞬時に言いたいことを口にするのは難しいかもしれません。「とっさのひとこと」がスムーズに言えるようになるには、やっぱり地道な努力しかないのです…。「語学に王道なし」ですね。毎日、とにかく中国語を口にする。構文を覚える。その構文をただ覚えるだけではなく、実際に使う場面を想像しながら、声に出す。覚えた構文を書いてみて、漏れがないかをチェックする。再度口に出して(録音して)、発音や声調が正しいかを確認する。単語を入れ替えて応用できるようにする。この繰り返し。うーん、本当に地道ですね。でも結局これが確実に力のつく方法なのでしょう。

ちなみに中国語だったら、こんなふうに言ったかもしれません。
沿着这条路往前走5分钟左右,有一座桥,过了桥,有一个大鸟居—一个造型独特的铜制大门。穿过去之后,是一条商业街,两侧都是店铺。顺着商业街走一段,会看到一个红色的大鸟居。去瞭望灯塔有两条路,一个是一直往前走,走10分钟即可到达,但要爬比较陡的台阶。另一个是在红色鸟居的地方左转,乘坐收费自动扶梯,5分钟左右就能到达灯塔。在灯塔上观赏夕阳,景色非常壮观迷人,很推荐!祝您旅途愉快!
訳:この道をまっすぐ5分ほど進むと橋があります。橋を渡ると、特徴的な形をした銅製の門みたいなもの、大鳥居が見えてきます。その鳥居をくぐると商店街があり、両側にお店が並んでいます。商店街をしばらく進むと、赤い鳥居が見えてきます。展望灯台へは2つのルートがあります。ひとつはそのまま直進するルートで、徒歩約10分ですが、急な階段を上らなければなりません。もうひとつは、赤い鳥居のところを左に曲がり、有料のエスカレーターを利用するルートで、5分ほどで灯台に到着します。灯台から眺める夕日はとても美しく、感動的なのでオススメですよ。楽しんでくださいね!
まもなく8月、江の島近辺には中国人観光客もたくさん訪れることでしょう。皆さんももしかしたらどこかで中国語で道を聞かれるかもしれません。その時のために今から準備しておきましょう!咱们一起加油吧!

今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2025年8月号に掲載しております。





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