2025年早々『ナタ:魔童鬧海』が公開からわずか16日で興行収入100億元を突破し、中国映画史に新たな記録を樹立、世界中で話題となっています。今回はこれを記念し、中国の注目アニメ映画の人気作を10作品ご紹介します。
西遊記 ヒーロー・イズ・バック(2015)

天上界で大暴れした罪により五行山に封じられた孫悟空は、500年後に少年僧・江流児によって封印を解かれる。しかし、法力を失った孫悟空は自信を喪失してしまう。幸いにも孫悟空は悪を討ち人々を救う中で、江流児の期待と信頼に支えられながら再び自分自身を取り戻し、「大聖の帰還」を果たす。ここでいう「大聖」とは、かつての強大で誇り高く、無敵の「斉天大聖」だけでなく、むしろ大切な人を守るために全力を尽くす「真の英雄」のことを指している。
ヨウゼン(2022)

楊戩(ヨウゼン)は「二郎神」とも呼ばれ、唐代以降、人々の間で、楊戩が「山を切り開いて母を救う」「山を担いで太陽を追う」といった伝説が語り継がれてきた。明代の小説『西遊記』や『封神演義』などの中で、楊戩は卓越した神通力を備え、3つの目を持つ「戦神」として登場する。しかし、映画『ヨウゼン』では、自由でクールな侠客として描かれている。懸賞金目的で人探しをしていた楊戩は、自分の甥である沈香(ジンコウ)と偶然出会い、共に過去の秘密を解き明かす旅に出ることになる。水墨画、スチームパンク、サスペンス、アクションなどの要素が融合し、そこに深く考え込まれたストーリーが加わることで、非常に魅力的な作品となっている。
ナタ:魔童降臨(2019)

孫悟空と同じく、神話上の人物・哪吒(ナタ)もよくアニメ化される人気のキャラクターだ。仏教、道教、儒教の伝承において、哪吒は魔を討つ天神として崇められてきた。『ナタ:魔童降臨』(2019)では、哪吒は天罰(災厄)を招く、ブサカワな「魔童」として描かれている。同時にアニメ化されたキャラクターの中には、東海竜王の息子・敖丙(ゴウヘイ)もいる。敖丙は端正な顔立ち、純粋かつ善良な性格でありながらも、妖族の出身であるがゆえに世間の偏見に苦しむ存在として描かれている。そんな二人は固い友情で結ばれ、共に理不尽な運命に立ち向かう。映画の中に出てくる「運命は自分で決める、天には従わない」などのセリフは、多くの観客の共感を呼んだ。
ナタ:魔童鬧海(2025)

前作の続編で、天罰を受けた哪吒と敖丙が元の姿に戻るべく数々の試練に挑むストーリーを描いている。本作は軽快かつユーモアあふれるストーリーでありながらも、依然として哪吒の不屈の精神を描き出している。今回哪吒が立ち向かうのは、社会の変わらぬ構造を象徴する、陰謀や嘘にまみれた仙界だ。この物語の本質は、個人の覚醒から、多くの人たちによる集団的な抵抗へと発展していく点にある。申公豹や竜王といった「悪役」にも豊かな人間性が見えて、観客が共感できるキャラクターとなっている。
ジャン・ズーヤー:神々の伝説(2020)

歴史上、姜子牙(ジャン・ズーヤー)は商周時代の政治家で、小説『封神演義』では、闡教の仙人・元始天尊の弟子であり、「封神」(神になる人選を定める)の役割を担う存在として描かれている。しかし、アニメ映画『ジャン・ズーヤー:神々の伝説』での姜子牙は、九尾狐を討つ任務を命じられるものの、その狐が罪なき少女・蘇妲己を人質にしているのを目の当たりにし、結局仕留めることができなかった。その結果、「神々の長」の座を追われ、凡人へと降格されてしまう。姜子牙は平凡な暮らしを受け入れつつも、天尊の欺きや悪行を見過ごすことができなかった。いわゆる「秩序」のために罪なき者が犠牲になることを拒み、ついには己の信念を貫いて束縛を振り払い、「反逆の英雄」として新たな道を歩むことになる。
白蛇:縁起(2019)

晩唐を舞台に、白蛇の妖怪である白(ハク)と、人間の宣(セン、許仙の前世)が恋に落ちる物語だ。人と妖という異なる存在でありながらも、互いにすべてを捧げていく姿が描かれている。
白蛇:浮生(2024)

『白蛇:縁起』の物語から500年後、小白と許仙はついに結ばれたが、僧・法海(ファーハイ)の妨害に遭ってしまう。
長安三萬里〜思い出の李白〜(2023)

唐代の歴史の盛衰と文学界の大事を描いたアニメ映画で、斬新な題材が選ばれている。この映画は、将軍・高適の視点――若い頃に李白や王維、杜甫などの詩人たちと交友を深めた日々を回想する場面から始まる。彼らはそれぞれ人生の起伏、そして大唐の栄華から衰退へと変わる過程を経験することとなる。映画は美しい映像と数十首の唐詩を通して、盛唐の輝かしい栄光や、詩人・李白の圧倒的な魅力を描き出している。一方で、戦乱や時の流れを通じて、人の世の無常さも見事に表現されている。中国史や唐詩に興味がある方には、是非一度観てほしい作品だ。
深海レストラン(2023)

心理的なトラウマに焦点を当てた異色なアニメ映画だ。物語は、参宿(シェンシウ)という少女が、父親、継母、弟とともに豪華客船に乗るが、暴風雨の夜に海に投げ出されてしまうところから始まる。参宿は幻想的で色とりどりの「深海レストラン」に辿り着き、実母を探す奇妙な旅に出る。この映画は、ステップファミリーや子供のうつ病といった深刻な社会問題を掘り下げつつ、巧妙な物語の展開を通じて、この旅の真相が明かされていく。観客は鮮やかな映像に圧倒され、主人公の姿に涙を流すことだろう。
雄獅少年/ライオン少年(2021、2024)

中国・嶺南地方の舞獅文化と、少年が夢を追いかけながら成長していくストーリーを結びつけて描いている。留守児童の少年・娟(チュン)が、夢のため、また父親の治療費を稼ぐため、舞獅の練習に励み、試合に参加するという物語だ。1作目も続編も、ごく普通の少年・娟が雑草のように強く、必死に成長していく姿を描いている。
中国のアニメ映画は次々と私たちに新たな驚きと感動を届けている。これらの映画には、物語、映像、音楽など、細部にわたって中国の美学が息づいており、あなたの心に残り、心を震わせる作品がきっと見つかるだろう。是非あなたも、中国アニメ映画の世界へと足を踏み入れてみよう!
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