大家好!皆さまいかがお過ごしですか。最近、久々に韓国ドラマを一作品を見終わりました。韓国語の勉強をずっとサボっていたのに、リスニング力が全く落ちていないことにびっくりしました。といっても、単語や文法を理解しているわけではなく、丸ごとキャッチして理解するという感じです。たとえば、「イエギジョメ→ちょっと話そう」、「カポゲスムニダ→帰ります」というように。耳がちゃんと記憶してくれました。そこであらためて、外国語を耳で何度も聞き流して覚えることの大切さを意識させられました。また、ドラマのセリフは、ラジオ、教材などの標準的な音声に比べると、速く感じられますが、そこにストーリー性や社会背景、歴史や文化があって、それに同じ表現が繰り返し使われるため、記憶に残りやすいです。
筆者は、英語に関してはどうしてもテキスト中心の勉強となり、そのせいかリスニング力は弱く、会話を聞いていても単語しか拾えず、文単位で理解することはできません。英語の勉強に割いた時間や労力の方がずっと多いのに、いつまでたっても英語は聞き取れません。真のリスニング力とは、きっと単語や文法を介さずに、丸ごと耳に入れて意味をとらえる、ということだと思います。ドラマ視聴はそれを鍛えてくれます。

ドラマ視聴といえば、今月、中国語を学ぶ日本の女子大生から面白いことを色々聞いたので、皆さんにも少しシェアします。この学生は中国の現代劇を観ているのですが、劇中で主人公が急に商品の宣伝をし始めることにびっくりしたといいます。ドラマ中で商品を宣伝するのはよくありますが、彼女が面白いと感じたのは、「セリフだけで商品の宣伝をする」部分だそうです。あるメーカーの「パック(フェイスマスク)」を宣伝していたのですが、普通なら俳優が実際に使用して効果を宣伝するのが一般的なところ、そのドラマではなぜかそのパックを一向に見せない(ずっと箱に入ったまま、一度も取り出さない)。俳優がただひたすら商品の良さを口で説明するだけのようでした。そこまで言うなら「一体どんな商品なの?」と気になって仕方なかったのだそうです。
ほかにも、「中国では恋人の関係になったらすぐにお互いの実家に遊びに行くんですか」や「中国のドラマはクリスマスがなく、すぐに旧正月が来るんですね」などの感想も頂きました。こうして色々語ってくれたその学生さんは本当に楽しそうで、中国のドラマを心から楽しんで観ていることがひしひしと伝わってきて、なんだか羨ましかったです。この新鮮な気持ちと楽しさは、言語学習が好きな人にしか味わえないものだと思いました。
さて、筆者が今月の授業で気づいた意外と盲点である、中国語の表現を一つ紹介します。筆者が大学で使っているテキストにこんな文がありました:“他把菜刀轻轻地放下了。”特に難しい文ではありませんが、“轻轻地”の訳に工夫が必要です。「彼は包丁を軽々しく置いた」と訳しそうになりましたが、よく考えたら、これでは中国語の意味とむしろ正反対です。最終的にこの文を「彼は包丁をそっと置いた」と訳し直すことができました。そう、“轻轻地”という動作は、まったく「軽々しい動作」ではなく、むしろ、「慎重に、丁重に」行う動作です。

「軽い」というと、「ぞんざいな」や「軽々しい」印象が持たれやすいのですが、中国語の“轻”は、しばしば「何か動作をする際、音を立てずに、丁寧に、静かに行う」という意味を表しています。ガサツな筆者は、昔からよく祖父母に、“轻点儿!”と諌められていました。来客用の少し高価なお皿や湯呑みを興味本位で持とうとして、真っ先に“轻点儿!”と怒られ、この場合「丁寧に!」「気をつけろ!」というニュアンスだったでしょう。また、家の中でドタドタと歩いていたときも、必ず親や祖父母に “轻点儿!”と諌められます。この場合は、「静かに歩け!」という意味でした。

そういえば、中国語の“脚步很轻”を「足取りが軽い」と訳している辞書がありますが、両者の意味に少し隔たりがあるような気がします。授業で学生に「足取りが軽い」ことを実演させて頂いたところ、その方はとても楽しく快活に歩いていました。一方、筆者が学生の前で“脚步很轻”を表現しようと、音を立てずにつま先で歩く様子を実演したところ、学生から「軽いどころか、むしろ重々しい感じ」と気の利いた洒落を言ってもらいました。実演を通して、中国語の“轻”は日本語の「軽い」とかなり違うことを何とか理解してもらえたようです。
最後に、まだ辞書にもあまり載っていない“轻”の用例を一つ紹介します:睡觉很轻。
この場合、「睡眠が浅い」と訳すべきでしょう。ちなみに、英語では「浅い眠り」は、A light sleepといいますね。つまり、この場合の「浅い」は中国語では“轻”、英語ではLightですね。
英語のlightといえば、「(睡眠が)浅い・(重さが)軽い」以外に、「明るい」という意味もありますね。偶然に、日本語の「かるい」と「あかるい」、形がとても似ています。このように、一見対訳できるような言葉でも、言語間で微妙な違いがあり、面白いですね。
では、また来月!
今回紹介した先生のコラムは『聴く中国語』2025年3月号に掲載しております。

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