『西遊記』――この中国古典小説は、今や中国だけでなく世界中で愛される“国際的な物語”です。
孫悟空、猪八戒、沙悟浄、三蔵法師の一行が天竺を目指して旅をする姿は、世代や国を越えて親しまれています。
しかし実は、中国人と日本人とでは、『西遊記』に対するイメージがかなり違うのをご存じでしょうか?
今回は、その違いに注目してみたいと思います。
日本に伝わった『西遊記』はいつから?

『西遊記』の物語が日本に伝わったのは、飛鳥時代までさかのぼります。
当時、日本にはすでに「三蔵法師がインド(天竺)へ仏教の教えを求めて旅をした」という話が伝わっていました。
その後、平安時代の文学では、三蔵法師が天竺ではなく日本を目指すという大胆な改変まで登場します。
「異国への旅」という設定が、日本人の好みに合っていたのかもしれません。
江戸時代に広まった“中国版『西遊記』”

明代(16世紀)の中国で成立した小説版『西遊記』は、江戸時代に日本にも輸入されます。
漢字で書かれたこの物語は「和刻本」として翻刻され、日本の知識人に親しまれました。
葛飾北斎もこの和刻本をもとに挿絵を描き、後に『絵本西遊記』として出版されています。
さらに、一般人向けに日本語訳が進められ、74年もの年月をかけてようやく完訳されました。
この翻訳版をきっかけに、日本各地で絵本や読み物が作られ、『西遊記』は庶民文化の中に深く根づいていきます。
キャラのイメージ、こんなに違う!

日本で『西遊記』といえば、「河童の沙悟浄」や「尾のある孫悟空」を思い浮かべる人が多いかもしれません。
これは、日本独自の挿絵や絵本によって広まったビジュアルの影響です。
たとえば:
- 孫悟空:小柄で野性的、虎柄の腰巻をつけ、尻尾がある。
- 猪八戒:黒いイノシシの姿。
- 沙悟浄:日本の妖怪・河童に姿を変えて定着。
- 三蔵法師:原作では唐の皇族ですが、日本では「気弱な青年僧」や「女性」として描かれることも。
こうしたビジュアルの先行により、日本独自の『西遊記』イメージが形作られていったのです。
中国でも“誤解”や変化がある

実は、中国でも『西遊記』のキャラクターには変化が見られます。
たとえば沙悟浄の武器は、本来「棍棒のような杖」なのですが、絵画や京劇ではしばしば別の武器に置き換えられています。
特に京劇では、『水滸伝』のキャラクター「魯智深」の武器をそのまま流用してしまい、沙悟浄=魯智深という混同が生まれてしまいました。
その結果、原作での「巨大で恐ろしい妖怪」というイメージは薄れ、「のんびりした従者」へと変わっていきました。
孫悟空もまた、国によって姿が違う

中国と日本で最も違いが大きいのが孫悟空です。
- 日本の孫悟空:小さくて野生的。尾を見せた妖猿スタイル。
- 中国の孫悟空:尾は隠され、人間に近く、正義感ある英雄像。
日本のビジュアルは原作に近い一方、中国の悟空は理想化され、「国民的英雄」へと昇華されています。
『西遊記』は今も旅の途中

中国では1986年に放送されたドラマ『西遊記』が定番として定着し、
日本では漫画やアニメ、ドラマなど多くの派生作品で親しまれています。
文化や時代に合わせて姿を変えながらも、『西遊記』は今も各国で旅を続けています。
そのたびに新たな「自分」を見つけているのかもしれませんね。
おわりに
国や時代を越えて語り継がれる『西遊記』。
その物語は、読む人の数だけ新しい姿に変わり、師弟四人は今も天竺を目指して歩き続けています。
――それはまさに、「旅する物語」なのです。
参考資料
- 穆鸿逸「一样的西游,不一样的西游观」(『人民日报海外版』2018年9月13日)
- 『繪本西遊記三編』
- 1986年版テレビドラマ『西遊記』
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