『詩経』には、「言に君子を念ふ、温として其れ玉の如し」という言葉がある。これはある女性が夫を玉に例え、夫が温かく包み込むような雰囲気をもち、かつ純朴で温和な者であると比喩したものである。以後、「温として其れ玉の如し」という言葉は「君子」たる者への評価となった。春秋時代には、孔子がさらに「玉」の温かさ、硬さ、透明さ、美しさなどの特質が、仁義礼楽忠信などの11の美徳を体現できると指摘した。そのため、玉石を身に着けることは装飾するというだけではなく、身に着ける者が玉のような品性を保つようにと自らを律する象徴となった。その後、古人は玉を贈ることで愛情の含蓄を表し、さらには耽美な男女の愛の誓いを示す品として用いた。
中国の「四大美玉」
そもそも「玉」とは何だろう。一般的に「石の美麗なるものは玉」と考えられ、玉とは美しい鉱石のことである。中国には「四大美玉」があり、それぞれ新疆の和田玉、陝西の藍田玉、河南の独山玉、遼寧の岫玉である。
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これらは数千年または一万年以上の開拓の歴史があり、そのうち岫玉は最も長い歴史を持つ。岫玉は比較的柔らかく、彫刻がしやすいため、中国で最も古い玉器や玉飾りは岫玉によって作られた。中国龍の最初の具象表現である新石器時代の紅山玉龍も岫玉で彫刻されたものである。
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和田玉も歴史が古い玉石であり、中でもまろやかな光沢のある羊脂白玉が最も貴重とされ、貴族に好まれてきた。
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藍田玉も非常に有名で、その硬い質感、繊細な紋様、美しい色彩から、玉製のシャベルや玉碗などの日用品、芸術品、礼器としても使用された。秦の始皇帝が天下を統一した後、藍田玉で自身の玉印を作らせた。
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独山玉の特徴はその色彩の豊かさと硬さである。硬さは玉彫刻に適しており、中国に現存する最古の大型玉彫刻作品である元代の「渎山大玉海」は、独山玉の伝世品の中で最も有名な一つである。
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「翡翠」とは何か
一般的に、「翡翠」は硬度が高い玉石であるとされ、主にミャンマーで産出される。「翡翠」という言葉は15世紀ごろから現れたものの、本格的に採掘され始めたのは18、19世紀に入ってからという。当時、ミャンマーは清朝の朝貢国の一つであり、翡翠は朝貢という形で清朝に広まり、間もなく「皇家の玉」や「玉中の極上品」との評価を受けるようになる。慈禧太后は艶のあるエメラルドグリーンの翡翠に一目惚れし、翡翠で多くのジュエリーや装飾品、日用品を作らせたといわれている。このため、翡翠は瞬く間に身分と高貴の象徴となった。
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玉石文化における翡翠
翡翠の開拓の歴史は短いが、その価格は高額であり、多くの高級品コレクターは翡翠のバングルに数万ドル、ひいては数千万ドルを費やすこともあることから、翡翠は極めて価値の高い宝石となった。翡翠の価値高騰の背景には、翡翠の装飾品に惹かれる女性購買者の存在があり、価格上昇は、ある面では女性の経済的地位の向上を裏付けている。このようにして、玉石はもはや君子の徳を表すだけではなく、また装飾品や美しい寓意が託された器物であるだけでなく、高級で美しい生活のシンボルとなったのだ。
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玉彫職人による革新
玉彫装飾品、特に翡翠の装飾品の市場化は、玉彫技術の発展を後押しした。90年以降に生まれた許群豪氏は期待されている玉彫芸術家の一人だ。彼はアニメ、劇、神話などの要素を玉彫の創作に取り入れ、通常ではあまり見られない悪魔、精霊などを玉石彫刻で創り出した。彼が彫った古代の瑞兽とされる瑞獣「貔貅」も伝統に囚われなく、まるまると太っていて愛くるしい。玉彫師の巧妙なアイディアと努力があって、玉彫作品に東西文化の融合が実現し、現代人の美的感覚を満たした。これにより新たに多くの人々を魅了した。
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中国人にとっての玉石とは
話を戻そう。玉石とはつまるところ、美を表し、気持ちが託されたものである。ある玉製バングルの持ち主はこのようにも言っている。「このバングルがガラスで作られているのは知っている。けれどこれは母親からの贈り物であり、十数年間一緒に過ごしてきたので、それが本当の玉であろうとなかろうと、その価値は変わらない。これは私の一部分であり、私の家族だ。」確かに、中国人は「玉」を愛しているが、決して厳格に「玉」を定義しているわけではない。おそらく中国人にとって、石に個人の思いが託された瞬間に玉となるのだろう。これこそが中国の玉石文化の真髄かもしれない。
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『聴く中国語』2024年2月号では「中国の玉石文化」を大特集。ぜひこちらもチェックしてみてください。
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