中国語語学誌『聴く中国語』では日中異文化理解をテーマにしたコラムを連載しています。
今回は日本中国語検定協会理事長の内田慶市先生が執筆されたコラム、うっちーの中国語四方山話−異文化理解の観点から⑲什么事情都能干!——言葉の±(プラスマイナス)評価 をご紹介します。
随分前ですが、次のような文章を読んだことがあります。
有一年,某工厂动手盖大房子。动工前,有人做了一番慷慨激昂的动员,末了说:“各位,我们齐心协力,什么事情都能干出来!”大家一听,不禁吃了一惊。
訳:ある年、ある工場で大きな建物を建てることになった。工事を始める前に、ある人は興奮した面持ちで皆に働きかけ、最後にこう言った。「皆さん、私たちは皆で協力し合えば、どんなことだってやり遂げることが出来る」と。みんなはそれを聞いて思わずびっくりした。
さて、どうしてみんなはびっくりしたのでしょうか?その答えは次のようです。
这句话虽然也合乎语法,可是上下文的感情色彩不同。“什么事情都能干出来”是贬义,指干坏事的意思,跟“大家我们齐心协力”无法搭配在一块儿。
つまり文法的には全く問題がない文ですが、“什么事情都能干出来”は“贬义”(マイナス評価)の意味になるからです。すなわち「悪いことを何だってやる」ということで、前の節の「皆で力を合わせて」との組み合わせに不都合が生じるというわけです。
言葉にはこうした「±評価」(“感情色彩”)の意味を持つものがあります。
例えば、次の表を見て下さい。
上の例はプラス或いはマイナス評価という違いですが、いわゆる、「ニュアンスの違い」ということも「同義語」「類義語」にはあります。
例えば、次の中国語の例を見てみましょう。
甲、乙两人来到一个地方,那儿人少,很静。甲说:“这地方很清静。”乙说:“这地方很冷清。”对同一个地方的评价,一个说“清静”,一个说“冷清”。这是什么缘故呢?
訳:甲と乙の2人がある場所にやって来ました。そこは人が少なく、大変静かでした。すると、甲は言いました。「ここは大変“清静”だ」と。一方、乙は「ここは大変“冷清”だ」と言いました。同じ場所に対する評価が、1人は“清静”と言い、もう1人は“冷清”と言ったわけですが、さてそれは何故でしょうか?
答えは次のようになります。
原来“清静”和“冷清”,两个词的基本意义相同,而感情色彩不一样。不爱热闹的“甲”喜欢这地方,所以说“清静”;爱热闹的“乙”不喜欢这地方,所以说“冷清”。
つまり、賑やかな場所が嫌いな「甲」はこの場所が気に入って「静かだ」=「静寂」と言い、賑やかな場所が好きな「乙」はこの場所が嫌いなので「静かだ」つまり「人が少なくて寂しい」と言ったわけです。
言葉の「プラスマイナス評価」「感情的色彩」或いは「ニュアンス」はネイティブならそれを「語感」として持っていますが、非ネイティブの場合はやはり覚えていくしかありません。ネイティブと沢山コミュニケーションを交わし、また、映画や小説などを読んで身につけて行くように心がけたいものです。
感情的色彩語の代表は「感嘆詞」です。以下のような例でそのニュアンスをつかんでみて下さい。
1. 唉(ài),病了两个月,把工作都耽误了。(あああ、2か月病気で仕事を遅らせてしまった。)
2. 咦(yí),刚才还在这儿,怎么忽然不见了?(あれ?さっきまだここにいたのに、どうして突然いなくなった?)
3. 呸(pēi),简直不像话!(くそっ、全く話にならない!)
4. 嘘(xū),别做声!(シー、声を出さないで!)
5. 哎哟(āiyō),痛得受不了啦!(ああ!痛くってたまらないよ!)
6. 喏(nuò),这不就是你的扇子?(ほら、これあなたの扇子じゃないの?)
7. 啊(à),原来是你呀!(ああ、なんだあなたでしたか!)
8. 嗬(hē),真了不得!(へえ、すごいね!)ます。実は「円」と「元」はいずれも元の漢字(正字)は「圓」なんですね。まったく違う通貨の単位と思いがちですが、元は同じ漢字なのです。
今回紹介したコラムは『聴く中国語』2025年10月号に掲載しております。
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