中国語語学誌『聴く中国語』では猫と詩人をテーマに昔の漢詩をご紹介しています。
今回は声優で翻訳家である白伊先生が執筆された、「春を知らせる使者はだ~れだ?」というコラムをご紹介します。
皆さんにとって、春の到来を感じさせる動物は何でしょう?
色づく桜の間でさえずる鶯や、軒下の古巣に戻ってきた燕……
深夜、茂みの中から猫が「ニャゴー!ニャゴー‼」と伴侶を探し求める大音声を聞くと、春が来たなぁ~と感じる人もいるでしょう。
実は発情期の猫の鳴き声は中国語で「叫春」と名付けられているんです。春を叫ぶ、それはそれで春を知らせる行動ですね。
子上持豫章画扇,其上牡丹三株,黄白相间盛开,一猫将二子戏其旁/宋・杨万里
暄风暖景政春迟, xuān fēng nuǎn jǐng zhèng chūn chí
开尽好花人未知。 kāi jìn hǎo huā rén wèi zhī
轮与狸奴得春色, lún yǔ lí nú de chūn sè
牡丹香里弄双儿。 mǔ dān xiāng lǐ lòng shuāng ér
【现代文】
春风和煦,气候宜人,春日姗姗来迟,百花盛开之中唯独人还没察觉春天的到来。
却看那猫儿先一步享受春色,在牡丹花香中和两只小崽嬉戏。
麗らかな風に陽気な景色、春は遅れてやってくる。人々はすでに花々が咲き乱れていることに気付かず、お先に猫がこの春光を独り占め。牡丹の香りが漂う中、二匹の子猫と戯れている。
これはにゃんの言葉?
一龙二虎三猫四鼠 yī lóng èr hǔ sān māo sì shǔ
生まれた子猫の数が少ない程いい、と古くから信じられています。一匹なら龍の如く素晴らしい出来上がりで、二匹なら虎のように雄々しく、三匹は普通の猫、四匹となれば鼠にも劣るという俗説で、犬に使われることもあります。
猫の増えすぎに注意⁉――古代の去勢事情
猫が増えすぎては困るというリアルな事情もあって、「一龙二虎三猫四鼠」という俗説ができたのかもしれません。
昔は主にネズミ駆除のために猫を飼っているわけだから、生まれた子猫が多い程、母猫は時間もエネルギーも取られてしまいます。
『猫苑』という文書には「公猫必阉杀其雄气,化刚为柔,日见肥善。(雄猫は去勢してその気迫を削ぐべし。さすれば気性穏やかになり、ふくよかになるであろう)」という文章があるように、猫の去勢は古代でも推奨されていました。
因みに去勢は屋外で行うことがおすすめで、痛がる猫は駆け込んだ家を安全な場所と認識しますが、家の中で去勢した猫はそこを怖い場所と見なし、家に寄り付かなくなるのだそうです。
古代人の猫飼いのノウハウもなかなかのものですね~。
今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年5月号に掲載しております。
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