初めまして。最近まで「全国通訳案内士」(以下、通訳案内士とする)という国家資格に6年かけて挑んだ五弦(名前の由来はコラムの最終回で種明かしします)です。私は2010年代に中国で勤務していた、現在は日本在住の40代日本人女性です。こちらのコラムでは「通訳案內士」に興味を持ってもらい受験生がもっと増加するといいな、という思いを込め「通訳案內士」に関する様々なテーマで書かせていただきます。
今回は一次試験で課せられる5科目のうち語学以外の4科目について、手こずった順からその対策について書きます。最初に申し上げておきたいのが、第1回で示したとおり、英語は中国語の8倍もの受験生がいるので、それだけ一次試験対策もネットを叩けば正直いくらでも出てきます。
試験勉強は「いかに自分に向いている学習方法を探すか」ということでもあるので、そんな山のような情報の中から見つけていってほしいと思います。あくまでここで語ることはエンタメとしてお読みください。
まずとりかかること
学習に取りかかる前にぜひやっていただきたいのは過去問を1~3年分解くということ。その時点の実力は関係ありません。だいたい過去問集は5年分くらいありますが、5年ってちょっと多いですよね。通訳案内士の場合、年度によって相当難易度が変わるので、できれば3年分は取り組みたいところですが、1年でも構わないのでまずは解いて答え合わせをしてだいたいの実力を知ってください。
その上で、年明けから手こずりそうな科目からだいたいのロードマップを作ってみてください。
私が勉強0から4科目受けるとしたらこんな感じで作ります。
ロードマップを作成する際のポイント2点
・あまりに早く勉強を始めると忘れるし、ギリギリだと間に合わない。GWを一区切りと考え、その前後でやることを明確にする。
・戦いがあった場所や各世界遺産の歴史背景など、地理と歴史は相関していることが多いので同時に勉強すると効率的。
学習難易度1位…日本歴史
4回目にしてようやく合格した歴史ですが、3回目までの敗因は本命を1冊に絞らず、毎年違ったテキストを流し読みしていたことです。これは他の科目にも言えることですが、テキストは通訳案内士対策本でも、大学受験のテキストでも自分に合うもの1つでいいです。1回目は中学の日本史から記憶を掘り起こしながら受けましたが、その時は流れを思い出すので精一杯。2回目、3回目は前年より読み込んでいたつもりが体系立てては理解できていなかったのと、細かな知識の定着が甘かったです。
テキストだけだと飽きてくるので、時にはAmazon Kindleで閲覧できる『日本史一問一答』や歴史人物の漫画、Amazon Audible で聴ける日本史に関する本なんかも耳読していました(Amazonばっかりですみません)。ほかに大河ドラマなど、こういったものは楽しみながら周辺の知識を身に付けられます。
私が4回目で合格できたのはズバリ、某スクールが開講しているメール講座をその年に受講したことです。毎週2回、歴史のテキストと最後にその内容に関するちょっとしたクイズが送られてきます。長文テキストは細かな内容まで練られて書かれており、流れも分かりやすく覚えるポイントもまとめてあり、大変役に立ちました。
なんといっても送られてくる曜日が決まっているので「次回までに今回の内容をすべて覚えよう」と配信されるペースに合わせて学習できるのが一番良かった気がします。出題されそうな写真も豊富に添付されていました。写真は「これはどこの何だ」とアウトプットするのにも使えました。
独学で限界を感じたら、スクールに頼るのも一つの方法です。3回目までは完全に独学でしたが、4回目で初めてスクールを使用しました。しかも1万円しないので、コスパ良すぎました。4回目は最終的にこのメールを最初から最後まで3周くらいして、それ以外は何もしませんでした。今となってはですが、最初からこうしておけば1回目で受かったと思います。それくらい、同じテキストを何度もやることの重要性を身に染みて感じました。
学習難易度2位…一般常識
一般常識は出題範囲がかなり広く、いつどこから何が飛んでくるか分からないので、毎年抑えるべきところを抑えて臨む必要があります。それは観光白書2年分(例外的にほぼ出なかった年があったそうです。これも問題かと思います)と第二回で書いたこちらです。
◎一般常識…日本の伝統芸能(歌舞伎、浄瑠璃、能、狂言など)の知識。日本食(日本酒、焼酎など)に関する知識。伝統文化(茶、俳句、華道など)に関する知識。そのほか相撲、武道などあらゆる日本のスポーツ。時事問題、社会問題など、日頃からニュースに触れておく必要がある。
日本文化に関しては初めて触れる内容ばかりだったので、「能のシテ、ワキといはこういう意味か。舞台装置はこうなっているのか」などと楽しみながら学習していました。
さすがにほぼNO勉ノリ受験の1回目は落ちましたが、2回目はギリギリくらいで受かっていました。個人的には奇問が一番多いのは一般常識だと思います。そうなるともはやクイズです。「なんじゃこりゃ」と思った問題を挙げてみます。一緒に問いてみてください。
Q:沖縄の伝統芸能「エイサー」が行われる時期はいつか?(2022年)
A:①節分 ②初夏 ③盆 ④秋
どれも当てはまりそうで、沖縄以外の都道府県でもイベントをやっていたりして知っている割には答えにくいですよね(答えは③)。
Q:日本で一番寺院の多い都道府県は次のうちどれか?(2021年)
A:①奈良県 ②京都府 ③愛知県 ④兵庫県
こちらも微妙なところをついてくるクイズのような問です(答えは③)。仮に実際のガイド中にこの話題が出てきてもその理由まで言える、が1セットなような気がしますね。
Q:JR山手線・京浜東北線の田町~品川間に誕生する新駅の駅名はどれか?(2019年)
A:①高輪エントランス駅 ②高輪ゲートウェイ駅 ③高輪ニュータウン駅 ④高輪セントラル駅
東京在住ならまだしも、発表されたばかりでなじみがない場所の新駅の名前…ちょっとつっこみたくなる問題です(答えは②)。
これらを楽しいと思えるようでしたら、受験の素質をお持ちかもしれません。
学習難易度3位…日本地理
もともと地理がすごく好きなのですが、こちらも一般常識同様、ほぼNO勉ノリ受験の1回目は落ちました。しかし2回目は自己採点で93点くらいを取ることができました。
参考書としてお薦めなのが「旅に出たくるなる地図 日本」。通訳案内士の受験界隈では必ずといって出て来る本なのですが、これは本当にいい本です!!通訳案内士受ける受けないに関わらず読んでいただきたいです。
日本全国の観光地を豊富なカラー写真と俯瞰で見える立体地図で紹介しています。旅行計画を立てる時や実際に通訳案内士になってからも重宝できる代物ですし、読み物としても面白いです。私はこれで「日本はなんてすばらしいんだ」と学習中によく一人で感動していました。
地理は各地の山脈・河川・海・湖・平野・岬・半島などの名称と位置が基本事項です。日本列島を人間の体に例えると「頭、心臓、動脈、静脈」など器官名と位置になるのでこれを覚えないことには医学を学べないのと同じですね。私は手を使って、白地図を何枚か用意して「河川」などのテーマごとに書き込んでいきました。実際の試験でもイラストと名称の問題はよく出ます。
また、②回でも書きましたが、Google Mapを多用していました。テキストを読んでいて初めて出くわした地名にどんどんフラグを立てていき、完全に頭に入っていればフラグを消すということを繰り返し、試験直前まで何度も見返していました。
時間があるときは図書館で「るるぶ」や「まっぷる」などの旅行情報誌を眺めていました。ここで気を付けたいのは「勉強している」と思って読まないこと。あくまでも「次はここに行きたいなぁ」と旅のプランを立てるつもりで。
あとは歴史にも言えることですが、実際に足を運ぶことです。勉強を始めてから旅先の美術館、博物館にもよく足を運ぶようになりました。町歩きで出くわす昔の建築物などにも目が向くようになります。東京・上野なんかはそういったものの宝庫ですね。興味深い展示が年がら年中やっています。
学習難易度4位…通訳案内の実務
こちらは観光庁研修テキストを5周くらい読んでください。以上!!なんですが、できれば問題集も1冊やってください。
次回はようやく中国語のお話。2次試験体験記です。
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