超訳・詩の中に広がるにゃんだフルワールド(6)猫は綺麗好き

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では猫と詩人をテーマに昔の漢詩をご紹介しています。

今回は声優で翻訳家である白伊先生が執筆された、猫は綺麗好きというコラムをご紹介します。

 猫は寝ている時以外は、暇さえあれば毛繕いをしているイメージがありますよね。

 寝起きの伸びをしては毛繕い。

 遊んでいる途中にふと止まっては毛繕い。

 食べた後はまたまた満足げに毛繕い。

 まめな毛繕いのおかげか、猫からはいつもほかほか暖かいお日様の匂いがします。

 人が顔を洗うように、真ん丸なお手てで頭をこする様は愛らしく、その姿に見惚れる詩人もいます。

猫は綺麗好き 题杂画九首 其一 猫 tí zá huà jiǔ shǒu qí yī māo /明・林弼

【现代文】

内相家中的小猫儿,总会第一个察觉会有客人造访。

今天早上它洗脸的时候把耳背都洗得干干净净,我也要开始写新题画诗了。

訳文:

明・林弼

内相の家の猫ちゃんは、誰よりも先に客の訪れを察知できる。

これはにゃんの言葉?

内相 nèi xiàng

詔勅の起草をつかさどった官、翰林学士。明朝中期以降は、宦官の勢力が拡大し、その影響力が翰林学士に匹敵することから、内相と呼ばれることもあるが、この詩はどちらを指しているかは不明。

蒙贵:猫の別称。『格古論』の「猫,一名乌圆,一名蒙贵。(猫の一匹は乌圆、もう一匹は蒙贵と名付けられた)」に由来するとされている。

猫が顔を洗うと客人来たり――俗説色々

何故詩人は、内相の家の猫が客の来訪を知っていると書いたか?

それは「猫が顔を洗うと客人が来る」という俗説があるからだろう。

俗説と言うのは大体根拠のないものが多いが、猫が顔を洗う時、前足の動きが手招きしている動作に似ているから、客を招いていると思われたのかもしれない。

「猫が顔を洗うと雨が降る」は、日本と中国で共通している俗説だが、こっちにはそれなりの科学的根拠がある。猫のひげは環境の変化に敏感で、雨の前の湿気はひげに伝わり、猫はその不快感を払拭するために顔を洗うのだとか。

何はともあれ、可愛い舌をちらつかせ、肉球をきゅっと丸めて顔を洗う姿の愛らしさと言ったら、実に筆舌に尽くし難い!

今回紹介した白伊先生のコラムは『聴く中国語』2024年9月号に掲載しております。

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