超訳・詩の中に広がるにゃんだフルワールド(4)「猫は魚好き」説は、日本だけじゃない?

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では猫と詩人をテーマに昔の漢詩をご紹介しています。

今回は声優で翻訳家である白伊先生が執筆された、「猫は魚好き」説は、日本だけじゃない?というコラムをご紹介します。

 猫の先祖、リビアヤマネコの生息地は砂漠など乾燥した地域で、水や寒さに弱い。そのルーツを辿っても魚とのつながりが見つからないのに、「猫と言えば魚」というイメージを拭えない人も多いですが、何故そんなイメージが定着したのでしょうか?

 日本は海に囲まれた海洋国家で肉よりも魚にありつきやすいから、猫=魚好きの考えができたという説もありますが、実は大陸国家である中国でも古くから猫の主食が魚だと考える人が多く、猫が魚を食べて満足している様子が詩に残っています。

猫ちゃん 猫儿 /宋・林逋

【现代文】

溪边细线垂吊,有时能钓到鱼,吃到饱的猫儿趴在花阴下,独自玩得起劲。

说来惭愧,我家穷得连老鼠都嫌弃不来,所以猫儿啊,在我家没法尽到捉老鼠的义务也不怪你,你没必要觉得惭愧。

これはにゃんの言葉?

尸素 shī sù

役割を与えられたもののそれを果たさず、報酬だけちゃっかり頂くこと。今でいう給料泥棒。古代はネズミ駆除のために猫を飼う人も多く、鼠捕りが役職みたいなもので、鼠は猫の捕食対象とは見なされず、魚こそ主食という考えがうかがえる。

「没有不偷腥的猫」――肉食だと言ってるのに、誤解だにゃ!

「泥棒猫!」というと、猫が盗んだ魚をくわえて逃走するシーンを思い浮かべることが多いように、中国にも似た言い回し「没有不偷腥的猫」(魚を盗まない猫なんていない)と言う意味がある。

 なぜ魚なのかは、魚が発する生臭さが肉より強烈だからかもしれない。匂いを辿って食べ物を探す猫にとって、生臭さはより識別しやすく、必然的に魚を食べることが増えたのかもしれない。

 面白い事に、日本語の泥棒猫は、他人の恋人である男性を横取りする女性を指す言葉でもあるのに対し、中国語の「没有不偷腥的猫」も「浮気しない男なんていない」と言う意味が暗に含まれている。

 恋愛も魚も、生臭いものですね……

今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年7月号に掲載しております。

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