中国の愛の名所巡礼

中国大接近


愛にまつわる中国の民間伝承とそれに関係する愛の名所を紹介します。

民間伝承に耳を傾けながら、一緒に中国の愛の名所を巡礼する旅に出かけよう。

民間伝承①:織姫と彦星(牽牛)

昔、彦星という名の若者がいた。彼は年老いた牛を飼いながら、自給自足の暮らしを営んでいた。 この牛は人間の言葉を話すことができた。

ある日のこと、南天池で沐浴をしようと、七人の仙女が下界に降りてきた。牛は彦星に、「仙女たちが沐浴をしている間に服を持ち去れば、その仙女と結婚できる」と告げた。彦星がそのとおりにすると、美しい織姫と出会うことができた。織姫は天に戻れなくなり、地上に留まることになったため、彦星と結婚した。

彦星は畑を耕し、織姫は機を織り、一男一女をもうけ、とても幸せに暮らしていた。ところが、天帝がこのことを知ると、西王母に命じて織姫を天に連れ戻させようとした。

牛は、一家が引き裂かれるのを忍びず、自らの角を折ると、それを小舟に変えた。そして、彦星と子どもたちを乗せ、「織姫を追いかけなさい」と言った。彦星たちが織姫に追いつこうとしたそのとき、西王母は頭に挿していた金のかんざしを引き抜き、空に銀河を生じさせた。

彦星は銀河を渡ることができず、二人は銀河をはさんで、ただ見つめ合うことしかできなかった。その揺るぎない愛に、ついに天帝も心を動かされ、毎年七月七日、カササギの橋を渡って逢うことを許したという。


愛の名所①:天河山(河北省)

織姫と彦星が七夕に再会する物語は、河北省邢台市の天河山が発祥の地とされている。現在の天河山は、中国の国家AAAA級風景区(観光等級4A)に指定されており、中原エリア初の山間部のスキー場のほか、天河湖、鴛鴦池、九天銀河、天門、碧蓮池、情人谷、牛郎庄、仙人峰、鵲橋など数十の景勝地がある。一度は訪れてみる価値のある場所だ。

民間伝承②:白蛇伝

「白蛇伝」の物語は宋代に生まれた。昔、千年もの間修行を積んだヘビの妖怪がいた。このヘビの妖怪は白素貞という人間に化け、西湖で前世の命の恩人である許仙を探し出した。白素貞は恩返しのために許仙の妻となり、許仙と共に医療で人々を救った。しかし、金山寺の和尚・法海は許仙から彼女を引き離そうとし、許仙を金山寺に軟禁してしまった。白素貞は許仙を助け出すために法海と法術対決をし、洪水を起こして金山寺を水没させてしまう。この行為は他の生き物を傷つけ、天の掟に背いたものだった。結局、白素貞は法海に敗れ、西湖の雷峰塔の下に幽閉されてしまった。その後、成長した白素貞の息子が科挙の最終試験に首席で合格したため、白素貞は無罪放免され、一家は再び一緒に暮らすことができた。

愛の名所②:西湖(浙江省)

白蛇伝の物語の発祥地は杭州市の西湖だ。元々大変美しい場所で、白蛇伝説の影響を受け、さらに「美しい愛に出会えるロマンチックな観光地」として知られるようになった。現在、西湖には100を超える公園内観光スポットと60を超える重点文物保護単位、さらに20を超える博物館があり、断橋、雷峰塔、銭王祠、净慈寺などの名勝も点在している。また、西湖は国家AAAAA級観光地(観光等級5A)に指定されており、2011年には「杭州西湖の文化的景観」として世界遺産に登録された。この美しさは見逃すわけにはいかない。

民間伝承③:梁山伯と祝英台

昔、祝英台という名の女性がいた。祝英台はずっと外の世界で学びたいと願っていたが、当時は女性が人前に出ることが許されない時代だった。そこで祝英台は男になりすまし、学問をするため越州に行き、書生の梁山伯と知り合う。以後3年間、2人は片時も離れず、昼間は共に学問に励み、夜も同じ部屋で眠りについた。祝英台は梁山伯に恋をしていたが、梁山伯は祝英台が実は女性であることに気づかず、彼女の想いを知る由もなかった。後に祝英台が梁山伯に想いを告白したとき、梁山伯もようやくお互いの気持ちに気づいた。

祝英台が故郷に連れ戻された1カ月後、梁山伯は祝英台に結婚を申し込むために向かったが、同じく書生の馬文才が先に結婚を申し込んでおり、しかもすでに結納まで交わしていたことを知る。失意のまま去っていく梁山伯を祝英台は18里の距離まで送った。2人は共に後ろ髪を引かれる思いだった。

その後しばらくして、梁山伯は祝英台への想いが募るあまり病気になり、鬱屈した思いを抱えたまま死んでしまった。悲しみに暮れる祝英台は、嫁ぐその日、梁山伯が埋葬されている場所を通りかかり、輿を下りて墓参りをした。すると突然、嵐が起き、梁山伯の墓が真っ二つに割れた。祝英台は無我夢中でその中に飛び込んだ。嵐が過ぎ去り静けさが戻ると、墓の中から2匹の蝶が互いに追いかけるようにひらひらと飛び立っていった。

愛の名所③:汝南(河南省)

この物語の主な発祥地である河南省汝南県には、梁山泊と祝英台の墓、梁庄、祝庄、紅羅山書院、十八里相送故道(祝英台が梁山泊を送って歩いた18里の道)など、梁山泊と祝英台に関する多くの遺跡が残されている。

「孟姜女」の物語には年代ごとに様々なバージョンが存在するが、核となる部分は簡単に言うと次の通りだ。秦の始皇帝は大統一を成し遂げると、万里の長城の建設を命じた。そして、孟姜女の夫は労働者として万里の長城の建設に駆り出されてしまった。万里の長城の建設は非常に過酷で、劣悪な環境で働かされていたため、孟姜女の夫は辛さに耐えきれず、怪我から病気にかかり、ついには命を落としてしまった。このことを知らされた孟姜女は、悲しみのあまり、万里の長城のふもとでいつまでも泣き続け、ついには長城を崩壊させてしまった。孟姜女は、頑なに愛を貫き守る女性であったと考えられている。

愛の名所④:山海関(河北省)

山海関は孟姜女物語の発祥の地で、そこから東に6.5キロ離れた鳳凰山に孟姜女廟はある。

壮麗かつ壮大な孟姜女廟には参拝客が絶えず、ほど近い秦皇島周辺の海の景色も大変美しいため、カップル旅行におすすめの場所だ。

そのほか”恋人の聖地”

峨眉山の同心鎖栈道

西安の仙游寺―「乘龙快婿(竜のようにすばらしい婿)」の故事の発祥地

大理・洱海(雲南省)―「風花雪月」のロマンチックな地。「天龍八部」の舞台でもあり、美しい湖と古城が恋人たちに人気。

鳳凰古城(湖南省) – 中国で最も美しい古鎮の一つ。夜景が幻想的で、橋や川沿いの散策がロマンチック。

麗江古城(雲南省) – 「中国のヴェネツィア」。石畳の街並みと運河が美しく、恋人たちに人気。

情人谷(海南省三亜市) – 「南国の恋人の楽園」。美しい海とロマンチックなリゾート地。

天涯海角(海南省三亜市) – 「愛の誓いの地」。「天の果て・海の果て」という意味があり、カップルが永遠の愛を誓う場所。

羅平・油菜花畑(雲南省) – 「黄金色に染まる愛の楽園」。春になると一面に広がる菜の花畑が幻想的なデートスポット。


これらの場所は、美しい風景やロマンチックな伝説と結びついており、中国では「恋人の聖地」として人気がある。カップルで訪れると愛が深まるとされ、多くの人々がデートやプロポーズの場として選んでいる。美しく、深く、世俗にとらわれない愛の物語は、風景すらもより趣あるものに変えてしまうようだ。


より詳しい記事の内容や日中2か国語記事『聴く中国語』2022年2月号に掲載されています。
ぜひチェックしてみてください!

   

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