中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習における大切なポイントをご紹介しています。
今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、「成語、どうやって覚えてます?」というテーマのコラムをご紹介します。
執筆者:七海和子先生
日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。
皆さん、こんにちは。七海和子です。
今回のお題は成語。「温故知新」とか「一石二鳥」など、おなじみのアレです。
ところで、皆さんは日常生活の会話の中でどれくらい成語を使っていますか?
「自業自得」や「一石二鳥」「一目瞭然」「支離滅裂」くらいならそこそこ使うかもしれませんが、普段の会話で成語をそんなに頻繁に使わないのでは?最近、中国ドラマを見返す機会があったのですが、セリフの中に成語の多いこと、多いこと!中国語だと成語を使う機会が多いな、とは思っていたのですが、今回、ドラマ鑑賞を通して改めて中国語では成語を「息をするように自然に使う」んだと実感したのです。
例えば、「沉默的真相」というドラマ。ある回では約39分のドラマ中、私が数えただけでも成語は7つありました。「そんなに多くないな」と思ったあなた!よく考えてみてください。これ、6分足らずの間に成語をひとつ使っている計算になります。が、この39分の中には、セリフはなくてただ睨み合っているシーン、景色のみでBGMだけが流れているシーンも含まれています。ということは、口を開けば成語が!と言っても過言ではないのです。では中国版ドラゴン桜と言われている「鸣龙少年」ではどうでしょう。「第一集」の冒頭5分ですでに3回使われています。恐るべし。
中国語では、こんな風に「息を吐くように自然に使われる」成語ですが、「成語、いつかはきちんとやらなくちゃとは思っているんですが、なかなか…」とか、「覚えにくくてつい後回しにしてしまうんです…」といったお悩みを多く聞くのも事実。
「なかなか覚えられない」という理由のひとつに、「ただ暗記している」ということもあると思います。確かに検定試験などを受けるためには、成語の習得は必須ですし、数多く出版されている成語を学ぶための書籍などを使って暗記する方法は非常に有効です。が、私を含めて例文の暗記はちょっと苦手…という人は、ドラマや映画、小説を使って身につけるという方法もあります。
例えば、ドラマを観るとき。ドラマは日本語字幕ではなく、中国語字幕で観るようにします。そして成語が出てきたらすばやくメモを取るのです。そのとき、ついでにその成語が使われた時間(タイムスタンプ)もメモしておきます。ドラマの世界に浸りたいので、この時点で意味は調べません。この回を観終わったら、先ほどメモした成語の意味を調べましょう。その後、タイムスタンプをもとに、その成語が使われたセリフを確認します。そのシーンの状況が完全に理解できたら、字幕をもとに自分でセリフを言ってみましょう。自分が俳優になったつもりで、情感たっぷりに言ってくださいね。ここでは、「シーンの状況が理解できている」ということと「成語が含まれるセリフを実際に口にする」ことが重要です。「こんな場面のこんな気持ちのときにこの成語を使うのか」ということを頭と体に叩き込みましょう。
小説を読むときも同じで、成語がでてきたらとりあえず成語とページ数をメモして、あとでその部分を見返します。あとはドラマと同じ要領で、最後は必ずその成語が使われているシーンを思い浮かべながら声に出して読んでください。ドラマや小説は自分が好きなものを観たり読んだりしています。その時はそのストーリーに入り込んでいるでしょう?その感覚を利用して成語を覚えるとぐっと覚えやすくなります。
もしかしたら、最初のうちは「どれが成語かわからない」と感じるかもしれません。でも、焦らないでください(小説は文字を追っているので、このような状況は比較的少ないと思います)。そういう場合は、まずはドラマに集中しましょう。そのうちにセリフのリズム、意味合いから、「これって成語では?」と当たりをつけられるようになってきます。そうなってきたらしめたもの!そのうちにだんだんその感覚が研ぎ澄まされてセリフの中から成語を拾えるようになりますよ。
この方法は時間がかかるので、試験対策には向かないと思います。が、実際のコミュニケーションでは「文字」はなく、「音声」だけなので、この方法を取り入れていると、ヒアリングが向上するとともに、「この場面でこの成語が使える!」という「自分で成語を使う」感覚がつかめるようになります。ドラマや小説が好きな方は是非試してみてくださいね!
今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年8月号に掲載しております。
コメント