超訳・詩の中に広がるにゃんだフルワールド(11)猫に癒されたい

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では猫と詩人をテーマに昔の漢詩をご紹介しています。

今回は声優で翻訳家である白伊先生が執筆された、猫に癒されたいというコラムをご紹介します。

 愛猫家たちに「猫のどこが可愛い?」と聞くと、様々な答えが返ってきます。

 プニプニの肉球が可愛い。ふくよかな体形が可愛い。鳴き声が可愛い。モミモミする動きが可愛い。たまに甘えてくる姿が可愛い。

 やがて皆大体こう締めくくります。

 「存・在・自・体・が・可・愛・い

 最近はSNSで猫に関する話になると、“世界破破烂烂,小猫缝缝补补”というコメントをよく見かけます。

 戦争や災害の絶えない現代社会に疲れた人にとって、あの小さな温もりの塊は元気をくれる大切な存在で、猫達は実に古い時代から多くの人を癒してきたのです。

赠猫·其三 Zèng māo·qí sān/宋·陆游

【现代文】

你没捉到老鼠?没事儿没事儿,我不会为此责怪你,你的鱼餐会定时喂给你的。
看你总是悠闲躺着度过每一天,但有时又会突然离开再回来,是什么天大的事儿能让你勉为其难地抬起尊贵的屁股呢……?

訳文:

鼠を捕まえられなかったんだって?

大丈夫さ、それで君を責めたりはしないし、魚の載ったご飯は時間通りきっちり出してあげるよ。

君はいつも日がな一日、のんびり寝て過ごしているけど、時にはふらりと姿を消すよね、その重い腰をあげさせるなんて、いったいどんな用事があるって言うんだろう……

これはにゃんの言葉?

 世界破破烂烂,小猫缝缝补补:こんなぼろぼろな世界を、猫だけがこつこつと繕ってくれている。歌手秦博が歌う曲《生亦平凡》の中の一節“这世界虽然破破烂烂 却总有人在缝缝补补”からの愛猫家アレンジバージョン。人間関係に疲れてアニマルセラピーにすがる現代人の増加が垣間見える流行語である。

 安売りしないからにゃ!

かくれんぼの名人と言えば猫


 いつもそばにいる猫がふと消えると、飼い主は大体そわそわしだしてしまう。立派な“猫奴”である陸游も例外ではないようだ。

 最初は鼠駆除のために飼い始めた猫が責務を放棄しても寵愛し続け、ご褒美の魚を与え続けている。

 溺愛のせいで毎日寝て過ごすようになった猫が姿を消せば、そりゃ気にもなるだろう。もしかしたらあとをこっそり付けたりしていたかもしれない。

 しかし、肉球で足音を上手に消し、持ち前の柔らかさで隙間をスイスイ通り抜け、得意なジャンプ力であっさり尾行を撒く猫に、かくれんぼで勝てる人間はそうそういまい。

 何しろ、かくれんぼは中国語で、“躲猫猫”とも呼ばれている。それだけ猫は一目を忍ぶスキルが高いのだ。

 もしかしたら陸游は自分を差し置いて猫の気を引く何かに密かに嫉妬しているのかもしれない。“猫奴”は誰しも猫様の一番になりたいから……

今回紹介した白伊さんのコラムは『聴く中国語』2025年2月号に掲載しております。

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