中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習にまつわるお話をご紹介しています。
今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、「読書の秋、おすすめの本《大人有烦恼,小孩来解答》」というテーマのコラムをご紹介します。
執筆者:七海和子先生
日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。
皆さん、こんにちは。七海和子です。
おもしろい本を見つけました!書名は《大人有烦恼,小孩来解答》(中信出版集团)。最初のページからいきなりすごい問答を繰り出してきます。ちょっと見てみましょう(訳は私が適当に訳したもの)。
大人:被上初一的儿子称作“臭老妈”,大为震惊。以后这样的是还会越来越多吗?
(大人:中1の息子に「クソババア」と言われショックです。これからこういうことが増えていくのでしょうか?)
小孩:是的。以为妈妈有时候真的是“臭老妈”。但妈妈也有温柔的时候,所以平日里只是“老妈”,烦人的时候“臭老妈”。我猜你经常会对孩子唠叨吧,说“学习了吗”“给我这样这样或那样那样”之类的。天天重复这些“魔咒”的话,1000%会被嘀咕成“臭老妈”哟。
(子供:増えます。なぜならお母さんは本当に「クソババア」だからです。でも、やさしい時もあるから日頃はただの「ババア」で、ウザいときには「クソババア」となります。子どもに口うるさく「勉強したの?」とか「あれやって、これやって」とか言っているのではないですか?毎日毎日そんなことを言っていたら、間違いなく「クソババア」って言われます。)
ひえ~!手厳しい。こんなのもあります。
大人:担心自己继续秃下去,可能这辈子都结不了婚。
(大人:このままハゲていったら結婚できないのではないかと心配です。)
孩子:你要不要试试多吃海带,听说有利于发哟。如果你头上已经没剩几根头发了,那还不如全部剃光,变成一个滑溜溜的光头!你觉得结婚前变成秃头,和结婚后变成秃头,哪个更有良心?绝对是结婚前变成秃头比较有良心啊!如果对方一开始就接受你的样子,后面怎么秃都不是罪过了。
(子供:ワカメを食べると毛生え効果があるらしいですよ。もう毛がいくらも残ってないなら、いっそのこと全部剃ってつるっぱげにしちゃいましょう!結婚前にハゲているのと、結婚後にハゲるのと、どちらが良心的だとあなたは思いますか?絶対に結婚前にハゲてるほうが良心的ですよ!相手が最初からハゲとわかって結婚していれば、その後どんなにハゲたって罪にはならないと思います。)
結婚前と後のどちらのハゲが良心的かなんてことまで考えているとは!考えの深さに脱帽です。しかもこの回答にはイラストがついていて、そこには“有赚钱头脑的话,就算是秃子也很受欢迎的。”(金儲けできるんだったらハゲでもモテるよ)との注釈つき。大人だったら、(たとえそれが真実だとしても)躊躇するようなことをズバッと言い切るこの潔さ。
この本は、『はい! こちら子ども記者相談室デス!』(新潮社)という本がもとになっています。これは、京都・亀岡発の子どもが書いて大人が読む月刊紙「かめおか子ども新聞」の大人の悩みを子ども記者が解決するという大人気コーナーが書籍化されたものなのですが、あるテレビ番組でこの本が紹介されていて、「各国の言語に翻訳されて続々と海外出版が進んでいる」とのことだったので、検索してみたらこの本がヒットしました。
早速取り寄せてみたら、これがおもしろいこと、おもしろいこと!本自体は119ページなので、あっという間に読み終わりますが、もう少しで腹の皮がよじれ過ぎて切れるところでした。ヨシタケシンスケさんのシュールなイラストが、これまたいい味出してます。この本には“寻找10个‘明智龟丸’吧”という、ページに隠れている “明智龟丸”を探すゲームもあって、徹頭徹尾読者を楽しませるようにできています。
この本は4章から成っていて、それぞれの章で育児、子どもとの付き合い方、娘の定職なしの彼氏、インスタ依存、年下の部下への接し方など、大人が抱える様々な悩みに対して、ズケズケと回答していきますが、笑いながらも妙に考えさせられてしまうのです。
「かめおか子ども新聞」の編集長、竹内博士さんがあとがきでそんなことを述べています。
“小孩子懂什么”“大人总是正确的”这种论调大错特错。孩子身上很好地保留着被成年人逐渐忘记的初心,所以比起成年人之间的争论,有时孩子无意间说出的道理反而容易让人信服不是吗?他们有时言语天真而残酷,有时又仿佛小小的大师,随口便道出世间真理。还有着足以包容一切的伟大的爱,孩子真是不可思议啊。
本当に子どもって不思議ですね。この本、文が短めなので、中国語で書かれた本ではありますが、気楽に読めると思います。皆さんも機会あれば是非読んでみてください。
皆さんがすてきな本と出会って秋の夜長を楽しめますように!
今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年11月号に掲載しております。
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