冬のハルビン訪問記 

中国留学記
コラムニスト 水上華
日本と中国のハーフ。日本で生まれ育ち高校三年生の時に中国への留学を決め中国の大学に入学するも、新型コロナウイルスの影響で一年生の間は中国への渡航が叶わず日本でオンライン授業を受けた。

 先日、春節休みを利用して母の実家であるハルビンを訪れた。新型コロナウイルスの流行以降、実に5年ぶりのハルビン訪問だったが、今回初めて冬のハルビンに滞在することとなった。真冬には最低気温がマイナス30度にも及ぶハルビンだが、今までそこまでの寒冷地域を訪れたことがなかったうえ、私は寒いのがすごく苦手なので、正直前日まで行くことを躊躇していた。 

 親戚には事前に靴と“棉裤”(中綿入り防寒インナーパンツorレギンス)を準備してもらい、手袋、ニット帽、ダウン、ヒートテック等を持ちこんで防寒対策ばっちりでハルビンへと向かった。空港には親戚が迎えに来てくれ、車で親戚の家へと向かった。空港から家へと向かう道中で、前日に雪が降ったにもかかわらず車道に雪が一切積もっておらず、しっかりと整備されていることに気づいた。 

 それに、防寒対策をしっかりしたおかげか想像より寒さを感じずに済んだ。室内も“暖气”(中国各地の都市政府が町全体に提供するセントラルヒーティングシステム。正式名称集中供暖)のおかげで常に25度前後の室温が保たれ、半袖で丁度いい程で、上海よりも暖かく感じた。冬はいつも寒さに負けて外出する機会がめっきり減る私でも意外と耐えられたため、ハルビンのいくつかの観光地を訪れることができたのでここで紹介しようと思う。

中华巴洛克风景街 

 ここは旧市街の一画を再開発した観光地区で当時の町並みを再現しており、一見西洋のバロック建築が並んでいるように見えるが、実は少し異なり中国の伝統的な様式が融合した中華バロック建築が並んでいる。ここの通りにはお土産屋さんやレストラン、カフェなどが店を構えており、ぜひ訪れてほしい場所だ。ここでは“张包铺”という包子をメインで売っているお店を訪れた。観光客だけでなく現地人にも人気の店で、夕飯時にはたくさんの人で溢れていた。個人的には餡が “排骨”の包子が一番美味しかった。周りを見ると“锅包肉”(中国東北料理の豚肉甘酢あんかけ)を一緒に頼んでいる人が多かったが、量がすごく多かったため私たちは“拉皮”(太めの春雨)を頼んだ。これも胡麻のソースがかかっていて非常に美味しかった。 

 

哈药集团制药六厂

 こちらはハルビンの製薬会社である“哈药集团”の第六工場の跡地だ。非常に美しいヨーロッパ風建築で、ここがかつては製薬会社の工場だったとは想像もつかない。近年非常に人気の観光スポットになっている。現在会社は別の場所に移転しており、館内が一般公開されている。館内では版画が展示され美術館になっているほか、自社の薬の販売や、広告が飾られるなど、観光客をターゲットにした商売が非常に上手いと感じた。話によると、昔“哈药集团”に就職した人は本当にエリートで、会社の待遇も非常に良く、テレビや冷蔵庫を社員に支給していたそうだ。金を支給したこともあったらしい。 

中央大街

 ハルビンを代表する歴史的大通り。国家AAAA級観光地で、アジアで最も長く、中国で最も早く整備された通りだそうだ。ロシア統治時代の建築が残されており、ヨーロッパに来たような感覚を覚える。非常に長い歩行者天国に店が並び、ショッピングにうってつけの場所だ。ここに来たら“马迭尔”のアイスを食べるのが鉄板。クラシックなミルクアイスで美味しかったが、マイナス気温の中で食べるのは流石に寒かった。 

索菲亚教堂

 ロシア正教の聖堂であるここもハルビンを象徴する建物の一つ。現在は教会としての使用はされておらず、絵画や模型が展示されている。本当に多くの観光客が来ており、朝から晩までコスプレをした人々が撮影に勤しんでいた。付近を歩いていても「ヨーロッパのお姫様のコスプレ写真撮りますよ」と声をかけるカメラマンがいた。以前来た時には見られなかった光景だったため、ここ数年で流行っているのだろう。 

松花江

 ハルビンを流れるこの川は冬になると寒さで凍りつき“戊通冰雪欢乐世界”が開かれる。凍った川の上でさまざまなアクティビティを楽しむことができ、特に人気だったのは氷の滑り台だ。一つ30元前後で楽しめる。そして松花江に来たらぜひ訪れてほしいのが“松花江大橋”である。これは当時のロシア橋梁専門家によって設計、監督され、1901年に開通した歴史ある鉄橋だ。2014年に鉄橋としての役目を終え、今は線路の上を歩くこともできる。日没の時間に行くと、とても美しい景色を見ることができる。

 

 みなさんも冬のハルビンを訪れることがあったら、防寒対策をしっかりしてこれらの観光地を巡ってほしい。

本コラムは『聴く中国語』2025年5月号に掲載しております。

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