超訳・詩の中に広がるにゃんだフルワールド(7)猫の狩猟本能

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では猫と詩人をテーマに昔の漢詩をご紹介しています。

今回は声優で翻訳家である白伊先生が執筆された、猫の狩猟本能というコラムをご紹介します。

 梱包用のビニール紐や丸めた新聞紙、買い物袋などをガサゴソさせると、吸い寄せられるように猫は寄って来ます。体を低くし、息を潜めて「獲物」の様子を伺い、お尻をフリフリさせてからバッ!と飛び掛かります。体高の約五倍の高さまで一気にジャンプする身体能力を持つ猫の飛び上がる姿を“起飞(離陸する)”と呼ぶ猫飼いも多いのだそうです。古代の人たちも、猫の狩猟本能に見惚れていたかもしれません。

晓起观猫捕鼠 xiǎo qǐ guān māo bǔ shǔ/明・唐顺之

【现代文】

早早起床后,依靠在桌前沐浴晨光。拜托门吏早早关门谢绝来访,以静养身心。

可是偶然看到屋檐下捉老鼠的猫,看着看着才意识到自己也和这猫一样,心中仍有杀意蠢蠢欲动。

訳文:

朝早くに起きて座卓に寄りかかり、朝日を目一杯浴びた。門番に頼んで早々に面会謝絶にしてもらい、気を休め、心を養うつもりだった。しかし偶然軒下で鼠を捉える猫に出会い、じっとその姿に見入っていると、猫と同じく、自分の心にまだ殺戮の衝動が蠢いていることに気付かされた。

これはにゃんの言葉?

隐几 yǐn jī

机にもたれかかる様子。“隐”(4声)はもたれ掛かる動作を指し、“几”は“几案”の略で座卓を指す。

朝暾 zhāo tūn

朝日、初陽。“暾”は陽の光や明るさとぬくもりを形容するのに使われる。

愛らしさに見え隠れするハンターの残酷さ

 何故古代の人々は、「猫が鼠を捕るのは、腹を満たすためではなく、役割を果たしている」と考えるようになったのか。それは猫が捉えた獲物をいたぶって遊ぶ情景を度々目にしていたからかもしれない。

 捕食が目的じゃないから、獲物を捉えてもすぐには息の根を止めない。もこもこの肉球で鼠のしっぽを押さえつけ、じたばたする姿を眺めたり、猫パンチを高速で繰り出し、玉のように転がしてみたり、わざと放しては追いかけ、何度も捕獲の瞬間を再現したり……

 フリフリさせるお尻、興奮で真ん丸に見開くお目目、ブワッと膨らませたお毛毛。狩猟モードに入る猫はその可愛さと反比例の残酷さで遊び、弄ぶ。鼠を弄ぶ猫を通して、詩人は人間の本能的な欲を捨てきれない自分の至らなさを恥じたのかもしれない。

今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2024年10月号に掲載しております。

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