大家好!いかがお過ごしでしょうか。今月は皆さまに紹介したい中国ドラマがあります。今年の4月に中国で放送された『我的后半生(原題)』というテレビドラマで、放送中からSNSでこのドラマに関する話題や感想を多く見かけたので、筆者も今月試聴してみました。一番の感想はまず、知っている俳優がたくさん出ているということです。

「知っている俳優が出ているくらいで何が珍しい?」と思われるかもしれませんが、中国を離れてから25年以上経ち、その間あまり中国のドラマや映画などを見てこなかった自分が知っている中国俳優といえば、平均年齢60以上の人ばかりです。
ということで、この『我的后半生』というドラマはそんなベテランの俳優が多く出演する、シニア世代の恋愛をテーマとする作品なのです。シニア世代の恋愛がテーマとなっているものといえば、今年の春、日本でも『続・続・最期から二番目の恋』というドラマが放送されました。日本と中国、たまたま同じ時期に同じテーマのドラマが放送されたことが少し不思議に感じたので、今回は日中比較も兼ねて『我的后半生』を視聴しました。同じテーマでも文化が違えば、描き方もこんなに異なるのか、ということが比較してみてよくわかりましたが、一つだけ共通しているのは、「この役にこんなすごい俳優を使うのか!」という贅沢すぎるくらいのキャスティングです。

例えば、『続・続・最期から二番目の恋』では、中井貴一さんが演じる長倉和平という主人公には恋のライバルが現れるのですが、このライバルを演じているのは三浦友和さんです。また、小泉今日子さんが演じるヒロイン・吉野千秋の母役として、三田佳子さんもゲスト出演しています。昭和を代表する大スターたちが続々と登場するこのドラマはストーリー云々以上に、元気なお姿が見られるだけでもファンとしてはうれしくなります。自分もこんなふうに年を重ねられたらと新たな人生の目標ができたような気がします。

この点に関しては、『我的后半生』も全く引けをとりません。主人公を演じる俳優・張国立さんは中国の「中井貴一」、とよべるほどの大御所です。その恋仇を演じるのは、映画『覇王別姫』、『レッドクリフ』で主役を務めた、張豊毅(チャン・フォンイー)さんです。このドラマでは張国立さんが演じる沈卓然という男寡の主人公が四人の女性と出会い、いろいろな形の恋を経験するのですが、その中の一人の女性を演じているのは、映画『ラストエンペラー』に出演していた鄔君梅(ヴィヴィアン・ウー)さんです。また、90年代の名作ドラマ『北京人在纽约』のヒロインを演じた厳暁頻さんも出演しており、大変懐かしく感じました。
前者の日本のドラマに比べ、『我的后半生』はよりシニア世代の暮らし、健康、老いの悩みといったディテールに切り込んでいて、リアリティを追求しています。それでいて、笑えて、泣けるドラマですので、ぜひ中国語の勉強も兼ねて試聴されてみてください。
さて、ここからは中国語のお話です。今月は筆者の誤訳から、中国語の“鱼类”と日本語の「魚類」の違いについて考えます。先日、授業時に教科書に書いてあった“不同鱼类,有适宜的温度范围”という一文を「異なる魚類には、それぞれ適した温度の範囲がある」と訳したところ、学生から「先生、異なる魚類は変です」と指摘されました。言われてからはっと気づいたのですが、「魚類」は魚全体のことを指しているから、「異なる魚類」は論理が破綻した表現となります。

なぜこんな変な日本語を言ったのか、と原因を考えると、中国語の原文にあった“不同鱼类”の影響だと気づきました。なるほど、“不同”が「異なる」で、“鱼类”は「魚類」だから、“不同鱼类”を「異なる魚類」にしてしまいました。そこで、学生の指摘をふまえ、もう一度中国語の“不同鱼类”の意味を考えてみると、正しくは「異なる魚」や「魚の種類によって」と訳すべきで、“不同鱼类,有适宜的温度范围”は「魚の種類によって、それぞれが適する温度の範囲が異なる」という意味の文でした。訳を訂正できたことはよかったのですが、学生たちに対して、なぜ中国語では“不同鱼类”という一見、矛盾するように見える表現が成り立つのか、という問題についても説明する必要があります。

授業ではとりあえず「中国語の“鱼类”は魚という類全体を指す以外に、魚のいろいろな種類を指すこともできるため、“不同鱼类”における“鱼类”は魚の種類を指しています」と説明しましたが、これでは中国語の“鱼类”の意味があまりにも紛らわしく、一体「魚類」なのかそれとも「魚の種類」か、どう判断すればいいかという新たな問題が生じます。正直、筆者も中国語の“类lèi”には、上位概念としての「類」と、その下位概念の「種」という二つの意味が混在していることに少し驚きました。

家に帰り、大好きな白水社の『中国語辞典』を引いてみました。“类”についてやはり、「類」「種類」と二つの意味が記述されていました。さらに、“类”と“种(種)”の使い分けについての説明があり、「2種類の野菜」は“两类菜”とも“两种菜”とも言えるが、「2種類の家電」の場合、“两种家电”は言えるが、“两类家电”とは言えないのだそうです。この説明から、“类”と“种(種)”は完全に同じなのではなく、「二種の」というとき、“种(種)”の方が“类”よりも一般的であることが見てとれます。ではなぜ、“不同鱼类”という表現が存在するのでしょうか。そこで、“不同鱼类(異なる魚)”と同じような表現を探すべく、ネット検索しました。その結果、似たような例が他にもたくさんあることがわかりました。

例えば、“不同鸟类的图片(異なる種類の鳥の写真)”、“不同猴类的活动范围(異なる種類の猿の、活動範囲)”、“不同科类的毕业生(専攻が異なる卒業生)”、“不同茶类对青叶要求的标准(異なるお茶の、茶葉に対する基準)”などと“不同(名詞)类”という表現がかなりあります。こうした“不同(名詞)类”の例における“(名詞)类”の部分に注目すると、“不同鸟类”の“鸟类(鳥類)”ような日本語にそのまま訳せるものがあれば、“不同猴类”“不同茶类”の“猴类”“茶类”のような日本語にしにくいものがあります(猿類?茶類?)。実は、これら日本語にしにくい例から、“不同(名詞)类”表現の構造が見えてきます。つまり、“不同鱼类”や“不同鸟类”は“不同+鱼类/鸟类(「異なる+魚類/鳥類」)”なのではなく、“不同(名詞)类”の中にたまたま“鱼”や“鸟”が入ったという構造でとらえるべきです。“类”は“不同(名詞)类”という構文に含まれることで、初めて「種類」という意味が生じるのだと思われます。用例の多い“不同(名詞)类”は一つの定型構文となっています。

そもそも、こうした“不同(名詞)类”の表現から“类”を取り除いても全体の意味は変わりません。“不同鱼类”は要するに「異なる魚」なので、“不同鱼”と言ってもいいわけです。“不同鸟类”は“不同的鸟”と同じ意味です。なんでわざわざ“类(種類)”を付け足す必要があるのでしょうか。うーん、ますますわからなくなってきました(笑)。では、また来週お会いしましょう!
今回紹介した先生のコラムは『聴く中国語』2025年9月号に掲載しております。





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