うっちーの中国語四方山話⑤−中国語の「しゃれ言葉」

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では日中異文化理解をテーマにしたコラムを連載しています。

今回は日本中国語検定協会理事長の内田慶一先生が執筆されたコラム、うっちーの中国語四方山話−異文化理解の観点から⑤−中国語の「しゃれ言葉」をご紹介します。

 先ずは前前回の宿題の答え合わせから。

 確か2問あったと思いますが、最初は“拉三卡”です。

 これは前回もお話ししましたが、かつて上海では外国人と中国人の間で「けったいな英語」が使われた時期があります。“洋泾浜英语”、つまり、「ピジン・イングリッシュ」ですが、“拉三卡”もそこから来た言葉です。実は、これは最初に“拉司卡”という言葉がありました。これについては以前に相原茂氏と一緒に出したテキスト『ことばのふしぎ—中国語学読本』(朝日出版社)にも収めてありますが、中国語の練習も兼ねて原文を引用しておきましょう。

 お分かりでしょうか?まあ、一種の「しゃれ言葉」ですね。

 本当にこんな風に言うかどうかは分かりませんが、“你会跳舞吗?”と聞かれて“我不会跳舞。”では面白くないので、私なんか“我会跳六”とか答えたりしてしまいます。つまり“跳舞”の“舞”と“五”をかけるわけです。

 ここで、中国語の「しゃれ言葉」についても少し触れておきましょう

 中国人もこうした「言葉遊び」が好きで、昔から例えば『金瓶梅』といった小説には沢山「しゃれ言葉」(中国語では“歇后语”或いは“俏皮话”とか言います)が登場します。

“歇后语”というのは、「半分は休みの言葉」ということで、最初の句を言えば、後の句は言わなくても分かるということですが、日本語で言う「○○とかけて××と解きます。その心は□□です」という形ですね。

 たとえば、“孔夫子搬家,净是书”と言えば、「孔子様の引っ越し」とかけて「本ばかり」と解く、その心は「負けてばかり」ということになります。つまり、「孔子様が引っ越しをする」と、家には“净是书”=「本ばかり」ですが、その“书”は「負ける」という意味の“输”と発音が同じで,結局、「負けてばっかり」ということになるわけです。

 こうした“歇后语”には同音を利用したものと、前の句の意味から類推するものの2つのパターンがあります。

 たとえば、つぎにものは同音を利用したものです。

「犬がアヒルを追っかけると、(アヒル)はガーガー鳴く」が元の意味ですが、“呱呱叫”は方言で“非常好”という意味があり、結局、「素晴らしい!」といった意味になります。

「蛙が井戸に飛び込むと,ポトンと音がする」ということから、“扑通”=“不懂”(分からない)となります。

「9男坊の弟は10男坊」ということで、“老十”=“老实”(真面目)となります。

 意味を考えたものとしては、以下のようなものです。

「十五のつるべ、7つが上なら,下に8つ」。つまり、“七上八下”(「心が乱れる様」)がその解になります。

実は「なぞなぞ谜语」もこうした同音や類推、或いは「両義」を利用した「言葉遊び」の一種ですね。

 最後に前回のもう一つの宿題の答えも示しておきます。

生发油买来卖去”ですが、これは上海語で読まないといけないのですが、

“Thank you very much.”となります。拝借するということになったわけですが、この辺りのことについてはまたそのうちお話ししましょう。

内田 慶市(うちだ けいいち)/1951 年福井県生まれ。博士(文学)・博士(文化交渉学)。専攻は中国語学、文化交渉学。福井大学教育学部助教授、関西大学文学部・外国語学部教授、大学院東アジア文化研究科教授を歴任。2021年関西大学外国語学部特別契約教授定年退職。東アジア文化交渉学会常任副会長( 2009 年~)、中国語教育学会理事( 2016年3月~2020年2月)、関西大学アジア・オープン・リサーチセンター長( 2017年4月~)、日本中国語検定協会理事長(2020年6月~)。主著に『近代における東西言語文化接触の研究』(関西大学出版部、2001)、『文化交渉学と言語接触─中国言語学における周縁からのアプローチ』(関西大学出版部、2010)、『漢訳イソップ集』(ユニウス、2014)などがある。

今回紹介したコラムは『聴く中国語』2024年8月号に掲載しております。

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