中国のクセ強野菜

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習における大切なポイントをご紹介しています。

今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、中国のクセ強野菜というテーマのコラムをご紹介します。

執筆者:七海和子先生

日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。

突然ですが、皆さんは香菜(パクチー)はお好きですか?最近では市民権を得た感もある香菜ですが、大好きな人はバクバク食べるし、嫌いな人は見るのもイヤ!というくらい好き嫌いがはっきり分かれる食べ物ですよね(ちなみに私は大好き派)。

今回は中国の食べ物のお話です

家の近所に中国物産店があり、私は1週間に一度は必ず行くほど頻繁に利用しています。皮から手作りの冷凍水餃子や葉っぱで包まれた粽、おなじみの肉包子の他に素包子(餡は肉ではなく、野菜と春雨)や香菇鸡蛋包子(きのこと卵の包子。これも肉なし)など、おいしいものがたくさんあるからです。ある日、そこの老板(lǎo bǎn 店主のことです)から微信に連絡がありました。なんと!茴香(huí xiāng)が近々入荷するので、いるかどうかの打診でした。

茴香は日本語ではウイキョウと言いますが、これでピンとくる人はあまりいないかもしれません。セリ科の多年草のハーブでフェンネルとも言うので、皆さんにはこちらのほうが馴染みがあるでしょうか。北京では主に葉の部分(見かけはディルというハーブや、葉付き人参の葉の部分に似ています)を豚挽肉とあわせて水餃子の具にしたり、卵と炒めて(茴香炒)おかずにしたりと、とても馴染みのある野菜(に分類していいのかな?)です。香りをつけるためにちょっと使う、といったハーブ的な使い方ではなく、とにかくたっぷり使います。甘くスパイシーな香りと、ほんのり苦味を感じる独特の風味は、これまたハマる人はハマります。中国では市場などで、どっさりと売られていましたが、日本ではほとんど見かけたことがありません。

 その茴香が購入できるとは!二つ返事で「いる!」と答え、入荷を心待ちにしていました。いよいよ購入の日。老板はなんと2kgの茴香を準備していてくれ、破格の値段で売ってくれました。その時の老板の一言。「これ喜んで買っていくのは、みんな北京人だよ。俺たちは食べたことなかったけど(老板と奥様は南京の人)、包子(の餡)にしてみたらなかなかだったね」。中国は国土が広いですから、場所によって食べるものも違うでしょう。でも、茴香は中国全土で食べられているとばかり思っていたので、ちょっとびっくり。

そこで、「香椿(xiāng chūn)は知ってる?春しか食べられないけど」と聞いてみました。老板曰く、聞いたことはあるけど、ほとんど食べたことはないと思う、とのこと。この香椿、私が北京に住んでいたころは、春先、市場に出るようになるとほとんど毎日食べていた大好物なのですが、日本ではほぼ見かけません。だいぶ以前、上野で一度だけ購入しましたが(高かった!)それ以来見かけたことはありません。香椿は、さっと茹でで細かく刻み、お豆腐と一緒にごま油と塩でシンプルに食べたり(香椿拌豆腐)、卵と炒めたり(香椿炒鸡蛋)するのですが、春先の数週間しか食べられない、まさに春の訪れを感じさせる山菜なのでした(背の高い木で、春先に出てくる新芽を摘んで食べます)。

 香菜、茴香、香椿いずれも独特の香りを持つ食べ物です。茴香や香椿はなかなか目にする機会はないかもしれませんが、もしどこかで出会ったら、是非手にとってみてください。香菜が好きな人なら、そして香り野菜が好きな人なら、病みつきになる可能性が高いですよ。

中国はとても広いので、食べ物も様々。中国には八大料理があると言われていて、それを覚える語呂のよい言葉もあります。一部分ではありますが、紹介しますね。「湘潭香酸辣,最辣属西川,粤菜重养生,苏菜口味甜,浙有蛤虾蟹,闽菜汤味鲜,徽菜火攻旺,鲁烹技法尖」(湖南料理は酸味と辛み、辛い料理と言えば四川一帯、広東料理は健康重視、江蘇料理はほんのり甘口、浙江料理は貝・エビ・カニ、福建料理はスープがうまい、安徽料理は火力が命、山東料理は料理のスキルがハンパなし)語呂と雰囲気重視で訳せばこんな感じでしょうか。なんとなく雰囲気が伝わればうれしいです。  

池袋や西川口などでは、日本人の口に合わせていない正宗(zhèng zōng)の中華が食べられます。そうそう、場所によっては燕京ビール(北京のビール)や紅星二鍋頭(白酒)など、地域のビールやお酒を置いてあるところもあります。お料理との相性もバッチリなので、こちらもお試しあれ!そういうところはスタッフもお客様も中国人が多いので、身近に中国を感じられて楽しさ倍増ですよ。そんな場所で是非今まで食べたことのないものを味わってみてください。

今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2023年9月号に掲載しております。

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