進歩を可視化する

コラム

中国語語学誌『聴く中国語』では中国語学習における大切なポイントをご紹介しています。

今回は日中通訳・翻訳者、中国語講師である七海和子先生が執筆された、「進歩を可視化する」というテーマのコラムをご紹介します。

執筆者:七海和子先生

日中通訳・翻訳者。中国語講師。自動車・物流・エネルギー・通信・IT・ゲーム関連・医療・文化交流などの通訳多数。1990年から1992年に北京師範大学に留学。中国で業務経験あり。2015年より大手通訳学校の講師を担当。

皆さん、こんにちは。七海和子です。

 4月になりましたね。新たな1歩に向けて踏み出される方も多いことでしょう。これを機に中国語を初めてみよう!という人も多いのでは?これより先に、「一年の計は元旦にあり!」と1月の段階で中国語を学び初めたり、新たな学習計画を立ててがんばっている人もいると思います。

 でも、でもですよ、あんなに「やるぞ!」と心に誓ったのに、途中でくじけてしまうこと、ありませんか?

くじける原因ってなに?

 実際に結果が出るのはたゆまぬ努力の末に得られるもので、簡単なことではありませんが、スポーツだと技の習得やタイムの短縮など、体感や目に見える客観的な数値が得られるので、自分で進歩を実感しやすいように思います。

 では語学は? せっかく意気揚々と始めたのに、語学の上達は目に見えにくいので、進歩が実感しにくくなりモチベーションが下がってしまうこと、ありませんか?

 中国語ははじめの時期は、声調や発音を練習したり、簡(繁)体字を覚えたりと、やることがとても多いです。そしてこれらの練習をしているうちは夢中になっていることもあり、結構続きます。

問題はその先。「声調、発音もある程度できるようになった、簡単な会話文の練習に入った。文法も勉強しだして、作文にも挑戦している」。これがしばらく続くと、「進歩してる?うまくなってる?」「単語も全然覚えられてないみたいだし、文法もちょっとよくわからない」と感じ始めることがあると思います。本当は上達しているのですが、肝心の進歩が目に見えないので、がっかりしてしまうんですよね。そのがっかりが、くじけるきっかけに…なんていうこともあるでしょう。

 それでは、あなたのモチベーションを維持するために進歩を可視化してみましょう!

進歩を実感するだめだめノート」

 これは私が実践している方法です。「だめだめノート」なんてネガティブなネーミングですが、その実、とってもポジティブなノートです。ただ、自分ができない、わからない項目を書くだけ。これはむかーしむかし、私が実際に書いた一言。、使い方全然わからない」。書いた項目は他にも山のようにありますが、書くのは「今できないこと」の一言だけ。問題を解決するための参考書からの引用などは書きません。早ければ数週間、項目によっては数年たって、やっとできるようになるものもあるでしょう。できるようになったらその項目に線を引いて消していきます。消去線は進歩の記録です。自信が持てなくなったとき、モチベーションが下がったとき、このノートを見ると「あの時できなかったけど、今はできている。ちゃんと進歩してる」と実感することができます。私は今は「ここ(実際の中国語)はこのように(日本語訳)訳した方がわかりやすかった」などと反省のようなものも書いていますが、この「だめだめノート」は自分の進歩に合わせて書く内容を変化させることもできるので、それを見るのも楽しいものです。

自分の声を録音する

 これ、最初の頃は辱めの拷問のよう。でも、しばらくすると慣れます。そして効果あり!です。

会話練習文でも、好きな文章でも、とにかく「朗読して録音する」だけです。

同じものを数週間、数か月練習したあとに、もう一度録音して以前のものと聴き比べてみましょう。もし皆さんが発音や声調、リズムに気をつけて練習していたなら、はっきりと違いを感じるはずです。この方法は進歩を感じるには一番早い方法かもしれません

ミスした問題だけを集めてみよう!

 試験対策のために、過去問に取り組んでいる方もいるでしょう。そうした場合、間違った問題だけをピックアップしたノートを作るのもおすすめです。この場合は、間違った原因を確認し、文法事項など必要な項目を書き入れます。時間が経ってからもう一度、ノートにある問題を解いてみましょう。解けるようであればOK。再度間違うようであれば、もう一度文法などを確認します。これは自分の進歩を可視化できるだけでなく、強化すべき項目も明確にすることができますよ。

 進歩を可視化すれば、「次はここを目指してみよう!」という意欲も湧くのではないでしょうか。他にもいろいろな方法があると思うので、皆さんが自分にあったやり方を見つけてくださればうれしいです。

 皆さんが長くながーく中国語を続けられますように。

今回紹介した七海先生のコラムは『聴く中国語』2023年4月号に掲載しております。

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